ミームの死骸を待ちながら

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators. We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators. - Richard Dawkins "Selfish Gene"

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators.
We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators.
- Richard Dawkins "Selfish Gene"

僕は「起業したい」とは軽々しく口にしないようにしている

「起業しようとは思わないの?」


研究者にならなかった理由を説明したとき、
入社先としてベンチャー企業を選択したことを伝えたとき、
あんたずいぶんフリーダムに生きてるねと突っ込まれたついでに、
上のような質問を受けることがある。
僕はどう見られているのか知らないが、今日だけで二回も聞かれた。なんなんだ。ぼくはセンチで働きますってば。


いつと比較しての話だか自分でもわからないが、事業を興すということが、ずいぶんと安っぽくなってしまったものだな、と思う。


起業したこともない身でアレだけど、まず誤解しないでほしいのは、僕は「安っぽくなった起業と言う選択肢」それ自体はいいことだと思っている。

いわゆる「べんちゃーすぴりっと」というやつである。聞く所によると聖地シリコンバレーにおいては、学生から老人に至るまで猫も杓子も草木もすべからくベンチャー精神を保有しており、それが故に新陳代謝が活発かつ実力が正当に評価される夢のような環境となっているらしい。
新しいものが次々に出てきて、空気が活性化し、本当にいいものが自然淘汰で残って行く。自然淘汰というのは非常に効率的なシステムであり、"死骸"が多ければ多いほど、その死骸の山に君臨する生者は、強靭であることが保証されているのだ。



しかし、である。起業というキーワードに関して、不快に思うスイッチが二つほどある。


「甘さ」と「押し売り」だ。


まず「甘さ」とは、逃げるための選択肢として起業を口にしたり、"起業"をあまりに低く捉えている(周囲のレベル調査が不十分)ことで、

  • 就職活動がしたくない、だから起業したい。
  • アイディアなんてろくにないけど、とりあえず起業したい。

などがある。個人的に、こういった考えにはあまりいい感情を抱かない。



次に「押し売り」だが、その主体となるのは、いわゆる「意識の高い学生」というやつである。
ある人に言わせると「あれは就活期にかかる一過性の病気」だそうで*1、彼らは自分の意見を大声で表明することを美徳としているため、どうしても目につく。構成要員の大半が「意識が高い」種のコミュニティには、異様な熱気が漂っている。そして彼らは、起業によって世の中を変えると宣言することが多い。そこまでは別にかまわない...どころか、素直にがんばって欲しいと思うし、僕自身も賛同する。せっかく生きてるんだから世界変えたほうがいいに決まってる。

しかし不快感を覚える特徴として、「押し売り」の人は暑苦しくないことが大罪であるかのように糾弾するのである。
サラリーマンでいいよと言っている人を見つけると、嘲笑し、勝ち誇ったように問いつめる。なんでそれで満足するの?一生搾取される側でいいの?いまの世の中会社に依存しない方が正しいよ。などなど。

暑苦しさの押し売りかい?ウチは間に合ってるよ、帰っとくれ。暑苦しさを外に出すかどうかくらい決めさせてほしい。



事業を作るひとも、その構成員となる人も、平等に社会の一部分でしかない。 ...とか考えていると、id:riywoさんの人間には二種類あるけど、優劣はない という記事に行き着く。これは非常に本質的な視点だと思う。

「この世界を組み立て直す」人は、確かに傍から見ればすごく見える。でも、 その人達が世界を組み立て直せているのは、循環する時間で生きることを選択している 人達があってこそだということを分かっているのだろうか。

人間には二種類あるけど、優劣はない - As a Futurist...

両者に「優劣」など存在しない。「好み」とか 「合う・合わない」なら分かるが、超越的な視点から判断される「優劣」など あるはずがない。

なのに、自分達のやっていることは「誰でもできること」とか言ってみたり、 「世界を作り直す」と言っている人に対して、その人のことをよく知りもせずに 「すごい」と言ったりする。実際はあなたの方がすごいことをしているかも知れないのに。

そういうのも無駄だからやめた方がいい。お互いに必要なんだよ。どんなに くだらない仕事に見えても、そのほとんどは何かしらの意味があって、それによって 支えられている人が必ず存在する。もしその人がすごいことをやってのけたのだったら、 あなたも同じ様に胸を張っていいはずだ。

人間には二種類あるけど、優劣はない - As a Futurist...

さて、「意識の高い」集まりに顔を出し自らも「意識が高い」と公言してはばからない学生は多いけど、起業する起業するとしょっちゅう言っていてそれで実際に起業した例を見たことがない
観測年数が短いので「あと5年ROMってろ」と言われるとどうしようもないのだけど、条件が整っているのに今日やらない人は、50年立ってもやらないんじゃないかな*2


本当に事業を興したいと思っている人は軽々しく口にしないし、
それをたまたま口にしたとき突っ込んでみると、まったく揺るがず打ち返してくる程度には芯が強く、考え抜いていることがひしひしとつたわってくる。
なにより、僕の見た範囲では「本気」の人は「行動済み」であることが多い。既に社長業やってます、毎日ビジネスプランをノートに書きなぐって分析してます、ベンチャーインターンとしてフルタイムで働いてます*3、などなど。
沈黙せざるを得ない行動力と成果を見せつけ、それはすごい、と相手を圧倒させるのが本気の人だと思う。

要するに、行動で示せと。

*1:これはうまいこと言ってると思う

*2:この「条件が整っている」というのがまたアナザー言い訳ワールドへの扉だったりするんだぜと自戒を込めて書いてみるけど、これはまた別の話。

*3:学業はどうした!