博報堂の社食で社員さんとお話ししたら広告/マーケティング++となった件
僕には縁もゆかりもない華やかな世界、と決めつけていた広告業界。ひょんなことから博報堂の社員さんに1 vs 1でたっぷり話を聞くことが出来た。なんだかんだでレポが遅くなってしまったのだが、今日は
- 広告業界&マーケティングっておもれー
- 人生とキャリアの賢い&楽しい過ごし方
という二点を中心に書きたい。
博報堂の新卒選考は既に終了しているので、直接就活に関わっているワケではない。それでも、いや、ひょっとしたら下手に採用の利害関係がないことが幸いして、素直な気持ちで話を聞け、自分の考えも妙に繕わず話し、今の段階で視界の狭さに気づくことができた気がする。
事の起こりは先月、某TL
「弊社に遊びに来ませんか」
「行きます!」(以下メールにて)
どんだけ適当なのか僕は。僕も僕だが社員さんもなかなかフリーダムで心が広い。これは間違いなく良い話が聞ける...!とガイアが俺に囁いた。
約一週間後。アカサカサカスにある赤坂Bizタワーにお邪魔し、社食にて数時間過ごした。社員さんにとっては常識的な話だったかもしれないが、僕の知識の空白と問題意識を満たしてくれるいい話を聞くことが出来た。以下、社員さんをMさんとして、話した内容とか気付きをつらつらと。
おもろいやん
マーケティングは既存のパイの奪い合い的なところがなんとなく好きになれない(僕自身は携わる気が起こらない、という就活生的な視点で)のだけど
僕が「らでぃっしゅぼーや」ではなく「Oisix」を選んだ理由 - ミームの死骸を待ちながら
以前こんなことを書きはしたが、広告業界とかマーケティングに対する興味が沸いた。これは大きい。
電通と博報堂の違い
広告業界アウトオブ眼中だった僕は、基本的な情報でもおもしろかった。たとえば電通と博報堂の違い、などだ。
日本の広告二大巨塔である電通と博報堂は"電博"と呼ばれ、就活生の人気の的であり、それ相応に魅力的な企業でもあり、そして何より、社会への影響力という点では群を抜いている。給料も半端無い。
電通はNo.1で博報堂がNo.2。電通の売り上げは博報堂の二倍に達し、三位のADKは博報堂のさらに半分...と続くらしい。この上位二社の違いは規模だけにあらず、単語を並べると...
このようになるらしい。わかりやすく言えば左脳の電通、右脳の博報堂か。まるでアレだな。マッキンゼーとBCG。またはGoldman Sachsと... (右脳派外銀が思いつかない。Citi?*2)
でかい話とひくい話
広告業界の基本情報はwikipediaや業界研究本に譲るとして、僕がおもしろいなと思ったのは、
- 規模の大きさ(影響力と金額)
- 目線の低さ(一般の人のことを始終考えている)
だった。
まずデカイ。相場やばい。電車一車両広告ジャックするのに2000万、新聞の1ページ*3広告で5000万、TVのCMは億単位。高い。そして現実の空間に影響力を持っている。
次に、良い意味で目線が低い。一般大衆にいかにしてアプローチするか、という問題に取り組むことが仕事で*4あり、心理学や人間工学などがダイレクトに関わってくる。なにもしないと一カ所にとどまってしまう情報を、フラット化する。フラット化能力に価値がある。エントロピーの拡大。
ほとんど知識のない状態で、僕は広告に対して
- 既得権益
- 鈍い、古い
- 斜陽産業
といったネガティブイメージを持っていた。これらは「人気業界に対する天邪鬼な批判視点」という土台に、ベンチャー企業やWeb IT業界の説明会で与えられた情報が乗せられることにより完成した感情論。
確かに、事実として昨今の不況でスポンサーは減り、広告業界は厳しいらしい*5。
しかし、認知のインフラとでも言えようか、持っているネットワークを、一気に失うことはないだろう。これは悪く言えば既得権益かもしれないが、既に獲得しているこの「影響力の広さ」「わかりやすさ」「目に見える結果」は抜群に大きい。土台があるため、インパクトのある仕事をするには良い環境でもあるのだろう。電博を目指す就活生の気持ちが少し分かったような気がする。一方で、社会的必要性は変わらないにしても給与のフラット化はどうしようもないのかな、とも思うが。
Webの広告相場は、過去のダンピングによって非常に低くなっている。Webとマスメディア、どちらが適正価格なのかはわからないが*6、結局のところ統合あるいは駆逐ではなく棲み分けがなされ、Web/Digitalが既存のものに完全に代替することは(少なくとも今後100年は)ないのではないか。インターネット広告に特化したoptとか、WebのUIに特化したbeBitみたいな会社はその先駆けと言えるかも知れない。
要は、僕が本の電子化について考えていることと同じ結論に達したのでした。異論は認める。
- 少し前に捕捉していた、この記事を思い出した。
良い仕事環境を獲得するための戦略
Mさんの前職は大手IT系だったのだが、学生時代に培ったWeb Designのスキルを買われて博報堂に入社した。あるときマーケティングとデザインが分かるヤツはいないか!ということで駆り出され、そのうち評判が広まり、座っているとWeb関連の情報や仕事が舞い込んでくるようになったらしい。そんなこんなで仕事していると、
「らき☆すたのテンション高いニコ動を映しながら真顔で説明しなきゃならないのできついものがある」
なるほどwww
さて、僕は得た情報を自分の身に落とし込んでしまわないと気が済まないタチなので、「良い仕事環境を獲得するための戦略」として一般化できるのではないかと思った。つまり、
- 将来5-10年後に伸びるであろうフィールドに早くから足を突っ込んでおく
- 強みを活かし、局所的にOnly Oneになる
この二つだ。
Mさんは学生時代にWebデザインのスキルを身につけたが、当時は、着目する人は稀だった。何事もそうだが、着目する人が少ない段階で手を付けておくと、「時代が追いついてきたとき第一人者になっている」し、「少数精鋭の、同じ志向を持った人脈が形成される」のだろう。そうして得た経験は、他者から自身を差別化する固有の強みとなり、局所的に「絶対必要な人物」となることができる。そうすれば、「誰でも出来る仕事を行う代替可能な人材」と比較して、格段に評価と機会が高まった仕事環境を作り出す結果となるのではないか。
そういえば、74冊の一件で出会った多田さん(仮名)も、新卒第一期生としてベンチャーに入社した。これもOnly Oneな環境へ飛び込む手段の一つだ。僕が二人のようなキャリアに共感するということは、たぶん、僕の望む生き方はここらへんにあるのではないか....という仮説。
「いままで行っていなかったことを行う」個人的イノベーション。
振り返ってみると、確かに僕には「新卒として広告業界の中で働く」適性は無いかも知れないが、十二分に興味の中だった。なにより、マーケティングに対する見方が変わった。というかいままでの視点が狭かっただけだが。
最近読んだチェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! (はじめて読むドラッカー (マネジメント編))の中で
企業の活動とは、マーケティングとイノベーションによる顧客の創造である。したがって、企業をマネジメントするということは、起業家的な活動である。(p.32)
という一説があった。新しいことを行うだけでは足りないのだろう。
面白そうなことに即座に首を突っ込む性格だとこんなイベントもしばしばあるわけで、これだから人生はやめられない。「能動的にアプローチする」こととは別に、「何でも手を挙げてみる」こともまた、良い経験の土壌となるようだ。
最近僕の人生がおもしろすぎる。