dankogaiの完成された半生哲学: 書評『弾言 -成功する人生とバランスシートの使い方-』
- 作者: 小飼弾,山路達也
- 出版社/メーカー: アスペクト
- 発売日: 2008/09/25
- メディア: 単行本
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読ませていただきました。
バランスシート、メモリ、果てはゲージ粒子まで人生をアナロジーで捕らえ、語る切り口がとてもおもしろい。僕自身もよく物事をアナロジーで考えるので、共感・納得しながら読めた。もっとも、生半可なアナロジーは専門の人から大いにdisられるので、あまり公言しないのだけど。
さて全体を通しての印象は、ブログの弾さんとイメージ違うな、というもの。
404の弾さんとは違って人間味があり*1、一人称も「僕」だし、なんか、新鮮。よく聞くなぁというものから、なるほどその視点はなかったわ、という項目まで幅広い各弾言が、非侵襲的に投げかけられる。見方が変わったかも。
各弾言はほどよく抽象化されており、弾さんの哲学体系を吸収・咀嚼して自分の人生に応用することが可能な、絶妙なバランスだ。僕が気に入った弾言をいくつか抜き出してみる。
- 考えるための時間を確保せよ
- 週40時間以上働かないようにしよう
時間がカネよりも大事で、考えるための時間・ヒマがあれば人生はどうとでもなる -- 結構唸らされた言葉だった。
- 本に付箋を貼ってはいけない
- 本を読んだら次は自分を読め
勝間さんが「本に線を引かない」というのと似ていて、イメージで本の内容を捉える速読の真髄だな、と。以前、id:fromdusktildawnさんの本のセレクトを「テキストブックばかりだ」と突っ込み入れてたけど、この読み方で「テキスト読み」ができるのか、個人的に疑問だ。(下記参考)
404 Blog Not Found:テキストも読もうよ、テキストブックだけじゃなくて
- どんなものでも「強さ」になりえる=誰もが強くなりえる
「飽きっぽいこと」が「強さ」の例として挙げられていて、興味拡散系としては非常に勇気付けられた。
- 「考える」とは、自分が勝てるゲームを作ること
- これから目指すべきは、人のゲームで勝つのではなく、自分のゲームを作ること。世の中の流れは、明らかにそちらに向かっています。
- 自分の居場所を作るだけの仕事はするな
- 世界のトレンドは、「カネ≒モノ」から「カネ≒ヒト」へと向かっている
- にもかかわらず、まだ「新しいカネの法則」が成立していないところに、社会の苦悩があるのでしょう
働き方、社会との関わり方。自分自身を独立した会社としてとらえ、独自性を発見・活用してゲームのルールを作る生き方。シューカツ中の学生の身、何か心に訴えかけるものがあった。
他の本との連想、未来へのベクトル
抽象化のレベルややわらかな上からの語り口から連想したのは、二ヶ月前くらいに読んだ日垣さんのラクをしないと成果は出ないだった。
- 作者: 日垣隆
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2008/05/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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僕の認識では、先輩世代からの若者への提言、といった本だ。1958年生まれのジャーナリストである著者が人生の教訓を100のTipsに分けて語る、その内容と語り口が「弾言」にそっくりなのだ。
でも、弾さん、まだ若いっしょ?1969年生まれということは、日垣さんより10歳は若いのか。ゴールからの視点でいいの?経済的にExitして、守るべきものもできた。最後の「僕たちの宿題」とか、もう人生悟ってない?
勝間さんや保田さんの本がいい意味での「未完」と「成長」を感じさせるのに比べて、僕は、弾さんのこの本から個人として「完成」した匂いを嗅ぎ取った*2。
この本をメルクマールとして、次回作は是非、未完で荒削りで個人的な将来への「弾言」を期待したい。応援しとります。