FREEとiPadとBookScan、情報収集四方山話
最近話題のフリービジネス。フリービジネスってなんなのさ。
会社でただ働きに近い作業を「フリービジネス」などと言って笑っているが(笑ってる場合じゃねぇ)、真面目に考えるために件のベストセラーを手に取り読んでみたのは1ヶ月前くらいの話。結論。"FREE"という切り口で以てして古典的な経済学ではカバーできない現象を説明するその手腕が秀逸であるが、記載されている物事はさほど新しくない。
フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 | |
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FREEでは、フリービジネスモデルを4種類に分類している。
そのうちふたつは古くからあるが、進化したもので、残りのふたつはデジタル経済と共に登場したものだ。それらを見ていく前に、四つのフリーを一歩下がってみてみれば、それが同じひとつの事象のさまざまなバリエーションに過ぎないことが分かる -- つまり、商品から商品への、人から人へのお金の移動、現在と将来のあいだでのお金の移動、あるいは非貨幣経済の市場に入ってまた出て行くことだ。経済学者はそれらを「内部相互補助(他の収益でカバーすること)」と呼ぶ。
(p.30)
(1)直接的内部相互補助: Direct cross subsidies
(2)三者間市場: The three-party market
(3)フリーミアム: Freemium
(4)非貨幣市場: Nonmonetary markets
(3)はキャッチーだけどイメージが付きにくい言葉だし、それ以外は訳書のセンスがお堅すぎて漢字だらけだったので、僕はこれを以下のように解釈した。自分用メモの意味も込めて、つらつらとまとめておく*1。
(1)宣伝/餌として「フリー」使うよ派
(2)要するに広告モデル。二面性あるよ派
(3)大半無料で一部が払う。割合の問題だよ派
(4)世の中の価値は金銭だけじゃねぇ!派
(1)は無料で何かをばらまいてその周りにある有料の何かを買わせるもので、マーケティング戦略の一種と言えるかも知れない。
(2)は要するにテレビやラジオの広告モデルだ。誰かが金を出して提供したものを、他の誰かが無料で受け取る構図。
(3)の"フリーミアム"とはフレッド・ウィルソンの造語らしい。まるで新しい概念のように思える響きだが、なんのことはない。mixiやニコ動やはてなの有料会員、アレと同じだ。無料で大量に人をかき集め、その一部がお金を払ってくれることを期待する。母数が多ければ多いほど、入ってくるお金が増えることが期待される*2。
Vectorや窓の杜でソフトをダウンロードしていた90年代からあるのではないかな。例として劇場に"子供無料日"を設定することにより増える客層から大人分の料金を獲得する、というモデルも紹介されている。(このように、ソフトウェア/Webの範囲を超えて再定義した点がうまいと思う。)
無料ではないにしろ映画のレディースデイも似たようなもので、値引きすることによって、女性客が彼氏か友達を連れてくることを期待している(そして男達はなにか納得できないものを感じながら正規料金で興味のない映画を見る)。
(4)はそれについて書いたとしたら本が一冊出来るテーマであり、おもしろい。しかしフリーのテーマである「無料からいかにしてお金を稼ぐか」からは外れているため、サブ的な扱いだ。
(2)と(3)の違いは、無料客が有料客へ転換する構造をそもそも含んでいるか否かであり、
(1)と(4)の違いは、金銭のやりとりが発生することを期待しているか否かである。
これまたバズワードくさいのだが、"FREE"という概念は経済のリアルな形を示す切り口として秀逸、ではある。だが行動ベースで考えた時、「フリービジネスは...」とか「無料の時代に成功するには...」などという議論が見受けられるが、これは違う、と考えている。
「無料」は切り口に過ぎない。アクションを起こすとき着目すべきは「無料」ではなく、人々の心理だ。
この本が面白いのは、行動経済学が絡んでくる所だ。「無料」は特異点であり、異端であり、トリックスターでもある。人間心理に、巧妙に働きかける。そこが面白い。
行動心理学と言えば有名な本あったなー、と思って探して、まだ読んでなかったので↓を買った。お金はないがAmazonギフト券は山とあるのだ。
予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 | |
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コンビニ受け取りにしたから仕事で遅くなってもOKなんだぜ。便利な時代だ。
情報の奔流と波乗りのメソッド
4ヶ月前、2月くらいに書いた文章を載せる。この頃は修論に明け暮れて(?)情報収集が疎かになり、その閉じた感覚がさらに気分を沈ませ内向きになる...というエンドレスループが起こっていた。
自分の周囲にしか目がいかなくなっている。こんな時、全部壊したくなるのが悪い癖だ。
現状の幸福、メリット、繋がりを全て断ち切って、まったく別の物事を始めたい、と感じる。停滞したら終わりだ、という危機感がある。かといって、「壊すこと」は停滞を裁ち切るものの、それそのものは進歩ではない、ような気もする。
情報感度が落ちまくっている。Google Readerはもはや読まなくなった。テレビは元々家にない。
Twitterに籠もっている。最近はTwitterもインフラになり、珍しくもなくなった。僕はコミュニティに価値を感じている。蓄積したネットワークに価値がある、と思っている。しかし良い面には悪い面が同席している。価値ある/心地よいネットワークが構築されているということは、裏を返せば世界が閉じてきた、ということになる。そこだけで完結している、面白くない世界だ。
Blip.fm, last.fm, foursquare, friendfeed, Brightkite, flickr, facebook, radiko....こんなのは自然にやらないと意味がない、というのが僕の主義なんだけど、どうも新しいものに飛びつく以前の勢いが失われてきた様に感じる。
はてなブロガーHashは死んだんだよ。
ジャマイカ、イタリア。世界は広い*3。戻ってきて、どういう視点で物事を見るようになるのだろうか。その先には就職が待っている。さてさて。
最近は流石に危機感を感じて日経新聞Web版を契約してみたり(案外使い勝手が良い。特に携帯版)。でもGoogle Readerは再構成中だ。情報が多すぎて破綻して、今は遺跡状態になっている。これを再構築するのは、なかなか興味深い作業だ。
現在ぼくは仕事で「情報に翻弄されている(上司談)」ようなので、何かここにヒントがないかと思って、指に考えさせてみるとする。思考筆記、というやつだ。昔20分間筆記をやって案外面白かったのを思い出す。
あたらしいものと言えば、iPad。「新しいもの」がいろんな文脈で登場するこの社会。みんな、新しくありたい、と思っているのだろう。それはそれで面白い価値観かもしれない。
iPad、触ってみた。サクサク度合いが半端ない。Sでない3GのiPhoneとは比べものにならない。予想以上に大画面で快適だ。
しかしやはり僕は使い所がイメージ付かない。なくてはならないもの、というレベルまでは浸透しない様な気がするのだ。あの微妙に持ち運びしにくいサイズ。少なくとも僕にはイメージできない。
電子書籍の波を狙うには、少々早すぎる。
いや、早すぎるくらいでちょうど良いのか。
電子書籍と言えば、書籍のスキャンサービスが日本でも出て来た。
- BOOKSCAN(ブックスキャン) 本・蔵書電子書籍化サービス - 大和印刷
- 元祖?リアルタイム進行状況が見れたりと面白い。
- スキャンサービス(廃棄処理まで)のスキャポン| 本の電子書籍化、紙文書(書類)のスキャニング
- なんとなくうさんくさい(クリップアートっぽい絵とか、明らかに競争を挑んでる価格設定とか)
ほぼ無料と言っていいほどの低価格。どうやって稼いでるのかねぇ。
と思ったら、中身は純粋な肉体労働・単純作業・人海戦術。
あえて泥臭い部分を請け負うことで、新しいものを支える。僕には彼らが「サヤ取り」をしているように思える。先端を切り取って、マジョリティに投げ渡す。
普通の人はやらない「サヤ取り」を、あえて、率先してやる人は、新たな世界を拓く可能性にカケている。地図に画期的な意味を与えたGoogle StreetViewの裏には、地道なGoogle Carによる絨毯爆撃的撮影作業があったように。
スキャンに戻ると、僕自身は「スキャンは自分で行うが、裁断機は所有していない」半自炊派*4だ。大学生&院生時代に溜まった教科書類は、研究棟に置いてあった裁断機を利用してザクザク分解し、自宅のscansnapでPDF化してHDDに眠っている。まぁ、今のところ生物学やら有機化学の教科書を紐解く機会には出会っていない。
それにしてもTLで話題になっていたから思い出してパラパラ読んでみたけど、化学の新研究は神参考書ですね
化学I・IIの新研究―理系大学受験 | |
おすすめ平均 おすすめの本 これはおすすめです 受験化学の辞書としては最高の一冊 今までの参考書の中でかなりいいかも。 素晴らしい本だが注意! Amazonで詳しく見る by G-Tools |
そして脈絡もなく終わる記事。