ミームの死骸を待ちながら

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators. We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators. - Richard Dawkins "Selfish Gene"

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators.
We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators.
- Richard Dawkins "Selfish Gene"

知的生産の基本のキ、新聞をスクラップしよう


ライフハックも楽しいですが、古流も楽しい。情報をうまく蓄積し、いつでも利用可能な状態にしておくことがロマンだと思う。最近の池田信夫氏のブログから引用。


要するに、知的生産の技術というのは、その人の職業やライフスタイルや知的水準などに依存する(M.ポラニーのいう)個人的知識であり、すべての人の生産性を10倍に上げる万能の特効薬なんかないのだ。

指定されたページがみつかりませんでした - goo ブログ


要するにあんた次第、と。そう言ってしまえばそれまでな気もするな。僕なりの知的生産技術体系を構築する一貫として、日経を一週間試読し、スクラップに挑戦した。手法を中心にまとめてみた。


あ、ちなみに逆にすごい - ミームの死骸を待ちながらでは購読を断ったと書いてますが、その後集配所*1に電話してやっぱ取ります、と連絡したので今も届いています。例のおっさんが集金しに来るのだけはやめてくださいと言ったので大丈夫(何が)。


1.目的


社会勉強。修士一年の就職活動に向け、社会の動向を知るため。また、ネットに偏る事なく情報を集める術を模索し、同時に、一般人とネット界隈の間の情報格差を目で見て確認するため。


2.方法


以前から試してみたいと思っていた方法があった。参考にしたのは、僕が尊敬する先人の1人、立花隆氏の「知」のソフトウェア (講談社現代新書 (722))である。彼は新聞情報の扱いに当たって、こう前置きした。

10数年にわたる試行錯誤を経て、私の新聞整理法が、ようやく一定のパターンに落ち着いたのは、ここ四、五年くらいのことだろうか


「知」のソフトウェア (講談社現代新書 (722)) p.24


そこで僕は、立花氏が10数年かけて到達したという整理法からスタートすることにした。巨人の肩の上に立つ。後世の者は先人の努力を踏み台にするべきだ。
彼の整理法とは、次のようなものである。分かり易い文章なので、そのまま抜き出す。

...市販のスクラップ・ブックを用いず、独自のスクラップ・ブックを作成している。その要領は次の通りである。


まず、スクラップは台紙に貼る。その際、一つ一つの記事を後でバラバラに扱えるように、大小を問わず、一つのスクラップを一枚の台紙に貼る。「一つ一枚の台紙」という原則は必ず守るべきである。記事が台紙より大きければたためばよい。台紙に比してどんなに小さな記事でも、余白は余白として残し、もったいないからもう一つ別の記事を余白にはろうなどというケチな根性を起こしてはいけない。そんなことをすると、あとで整理に不都合をきたし、必ず後悔することになる。台紙一枚倹約しても三、四円の得にしかならないのだから、ゆめゆめケチな根性を起こしてはいけない。


台紙の大きさは、A4判にしている。これは、新聞一ページの四分の一よりもやや大きい。段数にして、八段の記事まで楽に入る。どんな大きな記事でも、二回たためば必ず入る。

この台紙に、綴じ込み用の穴を二つあけ、二穴のチューブ・ファイルに綴じ込んでおく。これでできあがりである。難しいことは何もない。問題があるとすれば、台紙の調達と穴開けだけだろう。
これが実は意外に簡単なのだ。紙問屋(職業別電話帳で調べればよい)に行けば、一挙に片付いてしまう。素人でも量をまとめて買えば、裁断(紙問屋で扱う紙は全紙判だから裁断してもらう必要がある)と穴開けをやってくれるのだ。

(...中略...)


紙の種類は、紙問屋なら自分の目で見て選べるし、そうでなければ、市販のスクラップ・ブックと同程度の紙(クラフト紙)というような指定の仕方で十分だろう。


「知」のソフトウェア (講談社現代新書 (722)) p.31-33


この『知のソフトウェア』は、知的生産の技術 (岩波新書)発想法―創造性開発のために (中公新書 (136))の影響を受けた著者が書いた「知的生産第二世代」的な位置にあり、新聞整理だけでなく、雑誌と書籍の扱い、ナマ情報へのアプローチ法、文章を書くとき材料処理など、ハウツーを越えた、情報処理の本質に迫る本として超優良である。無意識の力を利用して「最小限の時間コストで最大の生産性を実現」する、立花氏の執念が熱い。僕もこの類の本は大好きで色々読んできたが、知的生産本としては文句なしに五ツ星、おすすめ。

最近のライフハックやらGTDに流されて、あーもー何が正しいのかわかんねーってなってる人は、一度読んで損はないだろう。


「知」のソフトウェア (講談社現代新書 (722))

「知」のソフトウェア (講談社現代新書 (722))


あ、僕の持ってるのは旧版なので、引用箇所に書いたページ数違うかも


閑話休題


さて、僕の新聞整理法の基盤となった立花氏の方法を紹介したが、いくつか付け加えておく点がある。まず切り取りの基準は「直感的におもしろそう」であること。立花氏のように、たとえば「ロッキード事件関連の記事をスクラップ」などという、活用を見越したカテゴリの縛りはもうけていない。その他技術的な注意点は以下四つ。

そのいち.台紙はA4のコピー反故紙
研究室から、裏が(完全じゃなくても、「ほとんど」)白い*2A4の紙をどっさりもってくる。それに二穴を開けてファイルに綴じていく。エコである。大量に必要なので、紙を探してくるのがわりと手間だ*3
そのに.切り取りは、定規を新聞に当てて破く
カッターとかはさみ使うより楽。

そのさん.右上角に西暦と日付、紙名を書く
紙名は…今のところ日経しか貼ってないが、就活で社会勉強が本格的に必要になったらもう一紙(読売が候補)とるかもしれないので一応。
そのよん.右下角に通し番号をふる
他のメディア(ユビキタス・キャプチャーや個人的メモ on Mac)から言及する際、「→sc28*4」としてリンクを張る。今のところ1月も2月も連番にしているが、月ごとにリセットする予定。


3.結果と考察


一週間で76枚のスクラップが集まった。内容を見ると、製薬、医療、バイオテクノロジー、化学技術、IT、そしてそれらの企業・業界の経済動向が多い。また、教育や新しい社会の流れに関する記事も多く見られる。自分の興味が蓄積として見えてくるあたり、はてブと近い気がするな。


4.まとめと今後の展開

知識的課題
政治・国際問題に興味を持つこと。僕は一端興味を持つと病的に調べるので、何かとっかかり易い興味の点火装置(プライマー)があればいいのだが。
技術的課題
紙の確保。研究室から漁ってくるのもなかなか大変。どんどん消費されていくし…。供給源がない人は、立花氏のように専門家に注文するしかないのかな。ちなみに、文房具屋でも、多少自由はきかないが台紙の注文が可能らしい。
生活への負担
思ったより軽い。ぱぱっと見て切って貼っていくだけで、約20分。朝の頭の体操としては適当なところだ。
将来の活用性
今の段階でも興味の傾向とかがわかって面白いし、情報をぱぱっと流していく練習になっているという実感がある。しかし実用性となると、もう少し続けてみないとわからんな。データベースとしての価値が出てくるには一年以上溜めないとだめだろう。就活が始まってからは、特定のフィルターを通して蓄積することで威力が発揮される…かもね。

スクラップした中から一日一記事選び、背景や用語を調べてみる、という自習課題を課すのも力になりそうだな。ちょっと今は時間的余裕がないが。


さて、


今のところ順調。飽きっぽい僕だがこれはいけそう。やはり


簡単
蓄積が目に見える


この2点は大きい。がんばってこ。とりあえず明日は形質転換DEATHよ。

*1:っていうのか?

*2:貼るだけなので両面に印刷されていても問題ないのだが、日付や通し番号をふったり、書き込みを行う際に気になる

*3:研究室の人も、最近裏白の紙がないなぁと思っているに違いない。すみません。

*4:scはスクラップの略