結晶化について。論文を読むために必要な知識
Synthesis of crystals with a programmable kinetic barrier to nucleation
この論文をよんだ。DNAをリボンみたいに折りたたんで、マイクロメートル規模のひもみたいな高次結晶構造を作った。特別な操作は必要なく、PCRとだいたい同じ。ワトソン・クリック相補性をうまく利用したデザインにより、ただ暖めて冷やして、の繰り返しだけでリボンみたいにのびてくらしい。
ここがわからなかったので調べた
Nucleationをコントロールできた!とか繰り返し主張するのだが、僕はよくわからない。そこで結晶化について調べてみた。さすがWikipedia、わかりやすい。
- Nucleation
- 核形成
- Crystal Growth
- 結晶成長
Nucleation & Growthという言葉は著者が気分で作った用語かなー(よくあるんです)と思いきや、ちゃんとした科学用語だったのか。不勉強不勉強
結晶化は核形成と結晶成長という2つの段階からなる。「核形成」は溶液中に分散している溶質分子が集まり、数ナノメートル程度の大きさのクラスター(集団)を作る段階である。微小な領域での濃度の増加が起こり、クラスターが十分に安定な条件が整うと、この段階が始まる。出来上がったクラスターは結晶の核となるが、不安定な場合は解離してしまう。安定な核となるためにはある程度の大きさを超えなければならないが、その大きさは溶液が置かれている条件(温度、過飽和、不純物など)によって決まる。原子が規則的・周期的に配列し、結晶構造が決定されるのもこの段階である。ここでいう「結晶構造」とは原子の配置の様式を意味する語であり、出来上がる結晶の塊の大きさや形のことではない。
次の段階、「結晶成長」では出来上がった核が成長する。過飽和状態が続く限り、核形成と結晶成長は進行し続ける。過飽和は結晶化の駆動力であるため、核形成と結晶成長の速さは溶液の過飽和度が高いほど加速される。条件によっては核形成と結晶成長のうちのいずれかが支配的になるため、結果として大きさや形の異なる結晶が得られる。医薬品などの工業的な製造過程においては、結晶の大きさ・形状のコントロールが重要な課題の1つである。過飽和状態が終わると溶液は固–液平衡に達し、結晶化は完了する。条件が変化して平衡が破れ、溶液が過飽和状態になれば、再び結晶化が始まる。
結晶化 - Wikipedia
ついでにNucleationについて。詳しく
- All natural and artificial crystallization process (of formation of solid crystals from a homogeneous solution) starts with a nucleation event.
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Nucleation - Wikipedia, the free encyclopedia
- Nucleation is a key concept in polymer [1], alloy, and ceramic systems.
つまりこの論文の新しい所は、
「特別な手法を用いず、ただ巧妙なデザインのみによって自己組織化結晶を作成した。しかも結晶化速度が高度にコントロール可能で、普通はランダムに起こるNucleationの開始時期を調節することができる」
これだな。速度のコントロールは結構すごくて、Nucleation、Growthの各プロセスがそれぞれ一定速度で進むようだ*1。これで「何分反応させたらどれだけ構造ができているか」を算出できて、特定の位置で止めてさらに高次構造を…とかできるのかな。
読み方反省
前えらそうに書いた(d:id:Hash:20071224)ので、「1時間で概要把握してまとめノート書き始め」を目標にした。が全然無理だ。用語の意味がわからず迷走したのが敗因か。
うーん…「自分の脳内に、その論文を読むのに必要なだけの知識があるか」のチェックも必要だな。