国の義務、買います。-商売になるサイエンス-
日経サイエンス 2008年1月号に載っていた記事に、"海図なき鉄散布計画"というものがあった。海に鉄を撒いて植物プランクトンを活性化し、CO2を取り込んでもらおう、というものだ。
- 出版社/メーカー: 日経サイエンス
- 発売日: 2007/11/24
- メディア: 雑誌
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“貧血”の植物プランクトン
海で行われている光合成には長年の謎があった。なぜ太平洋の一部では植物プランクトンの成長が遅いのかという謎だ。湧昇流のおかげで海水がかき混ぜられ,どこでもほぼ十分な二酸化炭素が存在するというのに……。答えは鉄の欠乏にあるらしい。
日経サイエンス
鉄の濃度が低い水と高い水を比較すると,植物プランクトンのクロロフィル(葉緑素)の量は同じなのに,鉄の少ない水中では光合成が減る。「鉄欠乏状態では,植物プランクトンは必要以上のクロロフィルを作り出す」と,研究を指揮したオレゴン州立大学のバーレンフェルド(Michael Behrenfeld)はいう。こうしておけば,環境が変わって鉄の量が増えると,余分に作ってあったクロロフィルをすぐに使えるわけだ。
以前の研究はクロロフィル量だけを測定した衛星画像に基づいており,この差を明らかにできなかったと考えられる。また,鉄が欠乏しているとすると,海洋への二酸化炭素の取り込み量を実際より2〜4%多く見積もってきた可能性があるという。Nature誌2006年8月31日号に報告。
とあるベンチャー企業がこれを利用し一儲けしようとしている。でも何故この原理が商売に繋がるのか?
京都議定書が絡んでくる。
京都議定書は、1997年に議決した議定書。その内容を簡単に言えば、
- みんなで温暖化ガスを出さないようにしよう
- 目標達成できない国は、排出の少ない国に罰金を支払う
というもの。ちなみに世界最大の排出国アメリカが不参加であることでいろいろ物議を醸している。
来年からまた新タームが始まるらしい↓。
京都議定書 - Wikipedia
京都議定書第3条では、2008年から2012年までの期間中に、先進国全体の温室効果ガス6種の合計排出量を1990年に比べて少なくとも5%削減することを目的として、各締約国が、二酸化炭素とそれに換算した他5種以下の排出量を、以下の割当量を超えないよう削減することを求めている。
ここで、「削減目標達成できそうにないYO!」という国を見つけて*1、削減目標オーバー分を二酸化炭素減少量に換算して企業が買い取り、買った分だけ鉄を撒いてやるわけだ。
うまいこと考えたな。絶対ニッチェやろ、これ。
うちの学科のある教授は「ビジネス感覚を持て!」と学生に語る。ただの象牙の塔の住人ではだめだ、と。基礎サイエンスをやりながら、それが世界にどう受け入れられて(あるいは受け入れられない)いくのか、という部分にも注意を払わねばならない。
勉強に使ったURL
*1:日本めっちゃカモにされそう