独学で効率よく簿記三&二級に合格するための僕の方法
今から三年前、学部二・三年の頃の僕はテコンドーの道場に週四回通ったり、株式投資で一攫千金を狙ってン十万塩漬けやらかしたり、一ヶ月に三十冊くらい本を読みまくったり、合気道部時代の友人と旅行に行ったり、学部卒で就職する気が無いくせにインターンに参加してプログラム組んでみたりと好きなように生きていたのだけど*1、今思い返してもやっててよかったなーと思うのが会計の勉強だ。
といってもさほど高レベルなことはやってなくて、日商簿記検定の二級と三級を同時受験してまとめて取った*2、というだけの話。それ以降、一級もチャレンジしたんだけど、合格点まであと二点とかそんな悔しい思いを二回連続でやらかしてしまい、気付いたら次の試験は研究室配属の後になってしまい、試験前に当時の彼女をほったらかしにしていたら険悪になったりもしたので、一級まで取っていれば税理士試験の足がかりにもなったから残念なのだけど、あきらめた。
不意に「将来的に役に立つ資格を取ろう」と思い立って始めたわけで、まぁ正直二級程度では「資格」として見られたときに役に立つかどうかは微妙だが、二級まで取ると、いや三級でも、だいぶ会計の雰囲気がわかってくると思う。何より、カネの出入りについて話を聞いた時に、仕訳がアタマに浮かぶのはでかい。新聞で「転換社債」とか「金利スワップ」とか「売買目的証券から満期保有目的への切り替え」とか出たときに「なるほど、アレか」と、その会計処理とB/S・P/Lへの関連がイメージできて、ちょっと楽しい
簿記試験の出題範囲としては、大きく分けて商業簿記と工業簿記があって、正直、商業簿記の方が役に立つフィールドはでかいと思う。三級は商業簿記しか範囲に入ってなくて、二級以上は工業簿記と商業簿記が(だいたい)半々で出題される。どこまでが何級の試験範囲か、という細かい話は忘れてしまった。四級とかもあるが、少し見てみたら「そもそも資産とは」というレベルから出題されるみたいだ。個人的にイマイチな気がする。
三級は義務教育に含めても良いくらいだと思うんだけど、だめかな。
このエントリでは、簿記試験のいちファン(?)として、僕の勉強法や、ここ気をつけて勉強すると効率がいい、というポイントをまとめてみたい。今更こんなもんを持ってきた理由は、簿記に限らず他の勉強にも応用できる考えだと思うし、まぁ直接的なきっかけとしては部屋の掃除をしていて参考書とかノートが出てきて懐かしくなったから、です。
ちなみに、資格取るわけじゃないけど会計の雰囲気だけ知りたい人には、やわらか会計士であるところの山田真哉さんの本が秀逸だと思う*3。僕もお世話になりました。
こんてんつ
1. 過去問をコアに暗記していく
2. 間違った問題を間違わないようにする
3. 逆算して勉強を進める
4. 必ず図を描く
5. 自分なりのまとめ/ウラ技を作成し、理解が進むにつれて修正し続ける
6. とにかく手で覚える
7. 電車の中は復習タイム
8. 新傾向の問題は大したことない
9. 予備校をうまく利用する
10. ちょっと良いマイ電卓を買う
1. 過去問をコアに暗記していく
簿記試験は、「落とすこと」を目的としていないし、ヘタな問題を出すといろいろ叩かれるからか、絶対に基本は押さえた上で出題してくる。合格点に達していれば勝ちなので、効率という点で見たときの最高得点は100点ではなくて合格点ぎりぎりだ。「100点で合格!」と自慢している人は「時間の無駄乙」ということだ。そして合格点を取るために、些細で特殊な応用問題を解ける必要はない。
過去に出た問題を繰り返し解いて、その共通項を押さえておけばまずはずさない。過去問は載ってる年数が大事、ということでこの参考書をオススメする。
いろいろ過去問を解いてると、「これは良問」という問題、つまり「この一問でいろいろな概念が学べるなぁ」「処理の流れがきれいにまとまっているなぁ」という問題に出会うと思う。そんなときはその問題を暗記するくらい繰り返すといい。効率良く解くための順番とか、ショートカット計算とか、そのへんまで意識できるようになってきたら、きっと他の問題にも応用できるはずだ。
ちなみに、基本テキスト(いわゆる教科書的な)は、難易度に応じて考えたほうがいい。三級では必要ないけど、二級はあれば便利、一級は無いと厳しい。ぼくが使ってたのはこのシリーズ。「合格テキスト(教科書)」と「合格トレーニング(問題集)」があるけど正直問題集はいらない。
2. 間違った問題を間違わないようにする
最も大切なのがこれ。
上で「過去問を繰り返す」と書いたけど、何度も何度も解いてもういいやという問題は頭の中で解き方をぱぱっと浮かべて飛ばしてしまえばいい。大切なのは、自分がどの問題を間違え易いのかしっかり押さえて、間違えた問題を以後間違わないようにすることだ。
この方針さえしっかりしていれば、問題を解けば解くほど得点は上がっていく。単純な話だ。逆にこの方針がしっかりしていなければ、何年分過去問を解こうが、何万円かけてスクールに通おうが、同じ問題につまづき続け、本番でも同じようにつまづくだろう。
まとめ方にもコツがある。ただ間違えた問題を書いておくだけではよろしくなくて、自分なりの解釈(ここをこうして間違えた)、一段階抽象化した解き方(この類の問題はここに注意)を書いておくのがポイント。何度も間違えているようならマーカーや付箋で目立つようにして、ヒマがあれば見直そう。
当時の僕はほぼ日手帳を使っていて、過去問や模擬試験を解いて間違えた問題はここに時系列でまとめていた。また、過去問冊子の目次に、間違えた問題には印をつけておくのも有効だ。
3. 逆算して勉強を進める
まずは過去問、それも最新の (前回の試験で出題された) 問題を、知識ゼロの状態でも良いから解いてみること。まったくわからないと思うけどそれでいい。これをやっておくことで「このレベルまで達する必要がある」ことをイメージできる。
また、昔の過去問になればなるほど試験傾向・形式が結構違ってくるので、昔の過去問にかかりきりになって最近の傾向をチェックできず、いざ本番受けたら形式がぜんぜんちがって撃沈、という悲劇になりかねない。それを防ぐためにも、まず「最近の傾向」を押さえることは必須。
そして、一冊、コアにする過去問集を決めて、何月何日までにここまで解く、という予定を逆算して設定する。僕が三&二級を受験しようと思い立ってから本番まで、約四ヶ月あった。
このとき大事なのはやや緩めに計画を立てること。少しがんばればプラスアルファで進められるようなレベル。あまり厳しく設定すると達成できない日が続いて「もういいや」となったりするので (経験談)。
あと、よく言われるけど、一周じっくりやって全部解き終わったら本番直前!とかじゃなくて、ざっくり何週も繰り返すといい。上述の日商簿記検定過去問題集 3級出題パターンと解き方〈2008年11月(120回)試験対策用〉シリーズには、問題の分類マップもついてるので、今週は苦手な分野を強化する、などという使い方もできて○。
4. 必ず図を描く
どんな問題が出ようと、その問題を処理するためのフォーマットが瞬時に頭に浮かばねばならない。
社債の問題なら償還単位をブロックにしてやるし、投資の現在価値の計算なら毎年の収支を並べて割り引くし、為替差損益の話なら縦軸に率・横軸に額を取るし、損益分岐点の計算なら連立方程式をグラフにするし、決算処理なら財務諸表間の関連をまとめて繋げる図を描く。
また、商業簿記でよく出る問題に、損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)を完成しなさい、というものがある。この解き方を自分で考えて一枚の図にしておくとラクだ。次の5. の項目にも通じるところがある。
こういった「図として問題を解く方法」を学ぶには、なんといってもこの参考書だ。めちゃわかりやすい。
今、細かい計算方法は忘れてしまったけど、だいたい昔書いていた図を見れば何をやっているのかは思い出せる。長期記憶への定着という観点から見ても、効率的なのではないかと思う。
5. 自分なりのまとめ/ウラ技を作成し、理解が進むにつれて修正し続ける
各問題間の会計処理の繋がりが見えたり、法則がわかったり、ウラ技的な計算法を思いついたりしたら、それをすかさずまとめて、他の問題にも適用することを試みよう。それがうまくいけば自分なりの理解のフレームワークとなるし、仮に適用できない例を見つけたとしたら、修正版を作成すればいい。
たとえば、簿記には適用する方法の違いによって*4処理が異なる、という例がたくさんあるけど、「ひょっとして計算がめんどくさい方法Bの時、方法Aで計算してからこの値を足したら一緒じゃね?」などと思いついたらすかさずメモる。僕の場合はほぼ日手帳にまとめた。
そして、以降問題文の中で「○○法を用いて計算」という部分を見つけたら、適用してみる。これを繰り返すことで、単なる暗記君ではない、自分なりの理解が確立する。
6. とにかく手で覚える
書きまくることで、処理を身体にしみこませる。
本番では自分の手だけが頼り。ノートでも良いけど、僕の場合は最初ノートを使っていたものの書く量が半端無くてどんどんノートが移り変わっていくので、反故になった紙の裏を使って書きまくっていた。汚くていい。
過去問は問題部分は(次回解くときにヒントにならないように)綺麗に保ち、鉛筆でうすく書いて解き終わったら消しておく。ただし解答部分には書き込みまくる。ぐしゃぐしゃに汚して記憶に残す。
メモを高速化するためにもいろいろ工夫できる。1000をkと書いたり1000000をMと書いたり、問題の数値規模に応じて変えてみる。あるいは、本番と同じA4用紙をメモに使うことを習慣づけ、各問題をどの位置にメモるか、自分の方法を決めていれば何も迷わず -- すなわち、本番でメモの配置に思考リソースを割くことなく、計算を進めることが出来る。
7. 電車の中は復習タイム
電車の中は問題を解いたり*5、新しい概念を学ぼうとするより、復習に充てると良い。また電車の中に限らず、腰を落ち着けて勉強できない時は常に脳内で復習する習慣をつけることだ。簿記の勉強を通じて、復習の大切さを痛感した。
1. で書いたように過去問で間違ったポイントや5. の「マイ法則」をコンパクトにまとめていれば、ささっと見直せて便利だ。僕はほぼ日手帳一冊にまとめていたので、満員電車でも何度も見直すことが可能だった。
8. 新傾向の問題は大したことない
過去問に出ない、新傾向の問題が不安かもしれない。だから予備校に通いたくもなるのだけど、ぼくの考えでは新傾向の問題は二種類に分けられる。
- 法律の変更など、予測可能な問題
- 今までにない切り口など、予測不可能な問題
実は前者「法律の変更など、予測可能な問題」はあまり気にしなくて良い。アンテナを張って(ここで9. の予備校利用が生きてくる)情報をキャッチしたら、ググって、予備校の対策ページや会計士さんのブログに出ている例題を解いてみる。あるいは、実際に法律の条文を読んで、過去問の該当する問題にあてはめて自分で問題を作ってみる。それを一通り押さえたらおk。制度変更後の最初の問題なんて基礎しか出ない。
僕が受けたときはちょうどリース会計の法律がちょっと変わったころで、事実この程度の対策で大丈夫でした。むしろ得点源のカモでした。
後者「今までにない切り口など、予測不可能な問題」も、実はビビる必要は無くて、基礎がわかってれば解ける問題が多い。長文でよくわからないストーリーが繰り広げられたり、一瞬焦るけど、落ち着いて処理を仕訳してみると基本問題と変わらなかったりする。
あと、ホントに難問(悪問)であまりに正答率が悪い場合は、ゲタを履かせることがあるらしいので心配無用。
9. 予備校をうまく利用する
簿記二級くらいだと、学校に通う必要は無いと思うし、一級でも必要ないと踏んでる。コースを取ったりするとえらくカネかかるので、貧乏学生には無理です。
大学受験時代から予備校の類は役にたたねぇと信じる超独学派*6なのだが、こういった予備校に情報が集まってくるのも事実で、うまく利用することで単純な独学より効率的に勉強を進めることが出来る。具体的には大原、TAC、LECなどがある。Webサイトに結構いい情報が載ってたりするので、そこはマメにチェックするといいかもしれない。
簿記|資格の学校 TAC[タック]
簿記 <資格の大原>日商簿記・全経簿記
簿記|日商簿記 講座|LEC東京リーガルマインド
で、具体的に僕がどう利用していたかと言うと、各スクールの本番直前の模試のみ、申し込んでいた。だいたい本番の二週間前にある。
これがまた良質の問題がそろっているし、リークがあるのかも知れないが、新傾向の問題が結構な確立で当たったりして、なかなかバカに出来ない。解説講義が付いている場合もある。せっかくの機会なので質問してしゃぶりつくしてしまおう。また、ライバルたちの姿を目の当たりに出来るので*7、独学を続けている身には結構刺激になる。隣のオジサンの電卓速度に対抗意識を燃やしてみたり。他人の電卓を打つ音が結構気になるな、ということにも気付く。
10. ちょっと良いマイ電卓を買う
僕の考える「良い」電卓の条件とは
- ある程度の大きさ、重さがある
- ボタンが押し易い
- メモリ機能がついている
- 「ゼロ二つ」または「ゼロ三つ」のボタンが付いている
- 一文字戻る機能が使える
これらすべてを満たそうとすると5000円くらいかかるかもしれないけど、その価値はある。安いのでいいや、と妥協するよりも気合の入る良い奴を買ったほうが結果的に勉強の効率がいいと思う。間違っても、以前からちょっとした計算に使っていたポケットサイズのボタンがゴムでできているような電卓で済まそうとしてはいけない。
マイ電卓を買うことで、モチベも上がる効果もあります。ちなみに、僕の使っていたのはこの電卓。結構オススメ。
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こいつは2010年に受けた証券アナリスト試験でも、相棒として活躍してくれました。まさに5年ものだね。この電卓のポイントを追加してみる。
- 数字キーのすぐ左に「一つ戻る」キーがある
- ボタンが大きめ、押しごたえもいい
- 電卓に安定感がある
次点は↓かな。でもやっぱ、一個ランクは落ちる。
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どちらの手で電卓を使うか?という問題
些細な問題だが、右手で電卓使うの?それとも左手?という問題がある。
(右利きの人の場合) 右手は細かい動きに慣れているのでパパッと押せる。持っていた鉛筆は指の間に挟んで、中指以降を中心にキーを押すことになる*8。または、わざわざ下に鉛筆を置いて電卓を叩くか。
僕はこのコンマ数秒の時間が無駄だと思ったし、試験までわりと時間があったので、左手 (利き手の反対) で押せるように訓練した。慣れるとどうってことないし、右手でメモを取りながら左手でブラインドタッチで計算を進められるので、非常に効率が良い。今も、PCのテンキーを押すとき役立っている*9。電卓とは配置が違ったりするけど、まぁ、何回か使うと慣れるみたい。
以上。
最後に一番大事な要素は、ありきたりだけど、勉強を楽しむことだろうか。
別にプロ講師でもなく、しかも保有してるのは二級までという僕がこんなエントリを書くことに後ろめたさが無いといえばうそになるが、素人でも簡単に情報を公開できるフラットさが現代のよさだと、よくわからない納得をして気にしないことにする。
色々触れて視野も広がった現在、もう一度勉強したらさらなる面白さに出会えると思うし、一級に再チャレンジしたい気もするけど、たぶん思い出すのに時間かかるし、より優先度の高い研究やら就活があるので、無理くさいな。
三級程度なら多分数週間の勉強で取れる*10と思うので、生活が切羽詰っていない人、会計の雰囲気を知りたい人は目指してみるのもいいと思います。次回試験は2009年2月22日(日)。チャレンジしてみてはどうでしょう。申し込みはこちらから。
別に回し者じゃないよ!
*1:いや今も好きなように生きてるんだけど。ほんとすみません(周囲の人へ)
*2:一日に三&二もしくは二&一級をまとめて受けてしまう制度がある
*3:でもやっぱり雰囲気だけで、実際にどんな処理をするのか、という理解の点では簿記試験には敵わない
*4:方法Aと方法Bのどちらを使用するかは任意、という風に定められている
*5:特に、東京の電車ではほとんど不可能だ
*6:高三の夏に、内容があまりに基本的過ぎると感じて、それまで通っていた、地元では2番目くらいに大きな塾をやめた。ぼくの故郷にはカワイもスンダイもヨヨギもなかったので、それ以降は必然的に独学となった。最新傾向の難問に触れたくてZ会にはお世話になったが、難問を解く事に別に快感を感じない僕としては、振り返って、無駄に難しいだけと言う印象だった。
*7:正確には彼らと競うわけじゃなくて自分の得点だけが問題
*8:鉛筆で何かを書いていて、それを置かずにキーボードを押そうとしてみてください。そのときの動き。
*9:細かいことを言えば、たいていのキーボードは右側にテンキーが付いてて、慣れない右手で押す羽目になるので、がっつり数値を扱うときはUSB接続のテンキーを使っている
*10:スキマ時間の勉強なら1ヶ月くらい?