日本に生まれ日本に育ち、今更ながらに自覚を得る。『日本という方法』書評
最近日本史がマイブームだ。司馬遼太郎を読みつつ、なにか"日本論"的なものを一冊...と思って手に取ったのがこの本だ。
日本という方法―おもかげ・うつろいの文化 (NHKブックス)
- 作者: 松岡正剛
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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直接の購入のきっかけはdankogai氏の書評。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51082324.html
千夜千冊 の松岡正剛氏による著作。日本を"編集国家"としてとらえ、「おもかげ」「うつろい」をキーワードに、天皇、漢、神と仏、数寄、朱子学・陽明学・日本儒学、キリスト教、"無"、昭和日本の失敗などを考える。
歴史理解の浅い僕にとって、一つ一つのトピックはもともと無機質な"出来事"でしかなかった。"出来事"の間を「日本という方法」という"のり"でつなぎ合わせて語ったのが本書だろう。
この本の本質は、日本は"編集国家"である、という一点。その理解に基づいて日本を一言で要約すると
一途で多様な国
(p.10)
となろうか。
日本的なるもの
二項同体、消極主義、ミニマル・ポシブル ―。まさに「日本という方法」です。私たちの先祖は、水を感じたいからこそ枯山水から水を抜いたのです。墨の色を感じたいから、和紙に余白を担ってもらったのです。
(p.245)
あなたの顎は丈夫ですか?
ロジカルな本に慣れていた反動で、なんというか"つれづれ"的な文章の運びに理解がついて行かない。よく構成された本というのは、口当たりのよい加工食品のようなものだな。
おいしいし、一目見れば味が想像でき、きれいに整頓された栄養成分表示によって効率よく栄養が吸収される。しかしその実、顎が退化してしまう。ナマの情報をかみくだき、自分で理解のフォーマットを作るスキルを忘れてしまう。勝間本読み過ぎ危険、ってか。
この 日本という方法―おもかげ・うつろいの文化 (NHKブックス) は日本論という特性上決して"ナマ情報"というわけではないが、わざと本質の明言を避け、大事な情報はまとめるのではなく随所にちりばめている。それで、顎の弱体化に気づくには十分だった。
編集の土台
編集行為。取り入れ、組み合わせ、溶け込ませる方法。
しなやかで多様な、それでいて危うさを秘めた文化。
本書を読み終わって改めて考えてみると、これほど"日本的"をうまく表せるのか、と驚く。
ついに義務教育ではそのおもしろさを発見することができず、僕は、七年前の文理選択で歴史を学ぶ機会を自ら放棄した。
おそらく歴史好きなら最初から見ているであろう見方、「ストーリー」としての歴史に魅力を感じ始めたのはここ数ヶ月のことだ。
知識とものの見方が科学・西洋に片寄っている状態を修正しようと手を出した歴史・東洋の畑。...どうやら思ったよりも面白い。
これから僕は七年の遅れを取り戻すべく、歴史に関する情報、その大多数は大多数は一般常識に属するものになるだろうが、ともかく情報を集め、"編集"するようになるだろう。そんな気がする。その時々に浮かび上がる、歴史のおもかげを、自分の言葉によって語れるようになれればいいと思う。