ストーリー
語るべきではないときに語ってしまうことは大いなる機会の損失であり、致命的な失敗でもある。既に語られたストーリーは改修することはできない。どんな手を尽くそうと、いかに知恵を絞ろうと、いかなる幸運に恵まれようとも、投げ出したストーリーは決して…
秋の夕方には、どこか突き放すような優しさが混じっていると彼は思う。空気には昼間の暖かさの残滓が残り、からからとした心地よさの裏で、時折吹く弱い風は夜の冷たさを抜け目なく忍ばせて来るのだ。 彼は夏服のカッターシャツから剥き出しになっている腕を…
彼が二つ目に住んだ土地—街というにはあまりに小さく、静かで、なにもなく、そして平和であったその町—には、かつて白鳥が舞い降りたという言い伝えがあった。なにか大昔に白鳥の姿をした神様がこの地に降り立ち、人々はそこに神社を建て神様を奉ったという…