日本語オーディオブックについてそろそろ一言言っておくか
前回からずいぶん間が空いてしまいましたが僕は元気です。おいしい料理作ってれば生きていけます。あ、料理と言えば、角煮の作り方書いて欲しい人いますかね?
早速本題からずれ始めたぞ。ええと。オーディオブックの話です。
今回、yteppeiさん の紹介で、オトバンクの提供するFeBe - オーディオブックのブロガーキャンペーンに誘っていただきました。ありがとうございます。
サンプルに一冊好きなものをいただけるとのことだったので、何にしようかな−、と迷って、
オーディオブック | 『日本史集中講義—点と点が線になる』井沢元彦
これを選んだ。現在キャンペーン中とのことで、この記事から飛んで新規登録*1&1冊購入すると500円分のクーポンプレゼント、だそうです。以下よりどうぞ↓
さてさて本題、オーディオブックについて。
よく言われるのは、アメリカは車社会で通勤中にCDを聞く習慣があるが、日本は移動のインフラが電車なので*2その文化が無かった、という言説。
ゆえに日本でオーディオブックというのは近年(勝間和代氏の起こしたブーム効果もあって)周知されてきたものであるが、まだまだ日が浅く、著者や出版社にも偏りが見られる。今後のタイトルの充実が望まれるところである。まる。
....
つまらん。
当たり障りのないこと書いてもつまらん!うーん。好きに書いていいと言って頂いたことだし、これ以降は好きに書く。主として、僕がオーディオブックを愛用しない理由について。めっちゃ当たり障りそうですが、文責は全て筆者にあります*3。
まぁ、こんなこと書いておきながら意外と数ヶ月後には愛用してたりする性格だからわからんけど(記事を書くに当たって細かく調べてみたら結構面白いものがあったし)。
こんてんつ
- なぜ歴史の本を選んだのか
- 情報原としてのオーディオブック
- 極個人的なリクエスト
- 教科書を朗読して欲しい。
- 「ゴロあわせ合格英単Vワード」シリーズ
- 会計・経営の物語系
- FeBeの改善してほしい点
- UIが悪い
- 倍速版が別売り
- 力を入れているポイントがちょっとズレていないか?
純粋な宣伝記事を書けない病なのでそれなりに考察的な物をやろうかなと思ったら、結構長くなったし、遅くなってしまった。
なぜ歴史の本を選んだのか
枕として、なぜ『歴史』を選んだのか?ということを考えたいと思う。答えは単純で、歴史が嫌いだったからだ。
「だった」と過去形にしたことにも意味がある。御多分に漏れず、僕も中学/高校時代は「歴史は暗記科目で面白くない!」と考え、数学や理科がそれなりに得意だったのでまぁそこまで深く考えることなく理系に進んだクチだったし、社会の授業はどうにも居心地が悪い*4記憶しかなかった。
しかし大学生になって、まぁいろいろな出来事から「歴史は重要だ」と痛感することになった。
というわけで、歴史をちゃんと勉強し直したい。しかし「やるべきこと」も「やりたいこと」もたくさんあって、それらを優先度でリストアップしたとき、歴史の勉強はどうしても下位に来てしまう。...こうして今までほとんど手つかずのままだった。
そこでいい機会だと思って、前述の『日本史集中講義』をいただいたわけである。
情報原としてのオーディオブック
しかし、そうは言ったものの、実は『日本史集中講義』という特定の本であった必要はなく、それどころか実は"歴史"という切り口すらも「たまたま」に過ぎない。歴史の本が何冊かあったから選んだだけである。では僕の判断基準のコアは何だったかというと、
能動的に勉強する場所を机の上から移動させる
というもの。この判断を掘り下げていくと、情報収集・学習一般についての一つの法則が浮かび上がってきた(自分/近しい他人の思考や行動を掘り下げて一般的な法則を考えようとするのは、僕の思考のクセだと思う)。
ところで、僕はAudible.com を使ってて、いくつか洋書をダウンロードして聴いている。
外国語の音声を聞くのは基本的に両極端の姿勢しかないと思っていて、(1)聞き流して「慣れ」ようとするか、(2)内容を理解しようとして前のめりに、能動的に聴くか*5のどちらか。
学習において、能動と受動を意識的に使い分けることはかなり重要だと思っている。さて、日本語オーディオブックについてもこの切り口で考えたとき、僕がもっと充実して欲しいと思うのは、
- 【受動】聞き流せるオーディオブック
- 【能動】机に座って行う「勉強」を持ち運ぶ
この2つだ*6。ところが残念ながら、どちらも現在のオーディオブック市場の主流とは言えない。現在は、僕の見たところ紙情報と等価の"情報収集"を想定したものが主流となっている。
どうも、音声ならではの特徴を活かし切っていない印象だ。
極個人的なリクエスト
ところで以上を踏まえた上で、こんな本をオーディオブック化して欲しい、というリクエストをちょっと具体的に書いてみる。
教科書を朗読して欲しい。
僕は教科書を読み込むと言うことをあまりしない。その代わりに全体をぱらぱらながめて、脳内にインデックスを作成する。知識が必要になったら「ああ、あのへんに近いことが書いてあったな」と思い出して参照する。
そのインデックス作成作業を、耳からも行えると便利だろう、と思った。
章ごとに販売してくれたら、試験期間に応じて大学生が買いそう。
とりあえず経済だとマンキュー経済学がお気に入り。生物だと、細胞の分子生物学か、その簡易版のEssential細胞生物学とかどうですか。
各分野の「これだけは外せない」教科書を選定し、それを「教科書」として使えるか否かを検討する過程で、現在のオーディオブックの限界が見えてくる...ような気がする。それがただの"限界"で終わるのか、新しい何かのヒントになるのか、僕にはわからないけれども。
「ゴロあわせ合格英単Vワード」シリーズ
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大学受験の時にお世話になった、好きな単語本なので。文章が下ネタありでアホくさくて大好き。英単語はこれと単語王2202を使ってたな...。懐かしい。
会計・経営の物語系
ドラマみたいに音声化したら楽しそうだと思うのは以下の3冊。個人的に好き。
FeBeの改善してほしい点
UIが悪い。
まず、カテゴリが結構細かく分かれているんだけど、どんな本がどのカテゴリに入っているのかイメージし辛いので探しにくい。複数のカテゴリに属している本も結構あるが、その基準もやはりわかりにくい。「自己啓発>勉強法」と「学習」、「実用・生活>教育理論・方法」と「自己啓発>コーチング」...うーん。
さらに、カテゴリを選択すると謎の順番で並んでいる。ページ遷移も昔ながらの青と紫のテキストリンクだし、これをぽちぽちやって1ページ1ページ見てると、「...もういいや...」という気分になる。
せめて発売日順、書名順、著者名順、売れている順番などで並び替えしたり、サムネイルで一覧できたりするとかなりアクセスが良くなる気がする。価格比較サイトみたいに何10個も並べてサンプル音声を聞き比べることができれば、本屋でぱらぱらと比べ読みするような感覚だ。オーディオブックを選ぶのも楽しくなる。
とりあえず今のままでは欲しい本が"あるのかないのかわからない"し、それより大きな機会損失として、隠されたニーズの発掘が出来ていないと思う。そもそも欲しい本が音声化されていない確率の方が高いのだから、特定のタイトルを求めて買う、というオーディオブックの買い方は現状で難しい。フラットな選択肢ではない。特定のタイトルが欲しければFeBeを探すよりも通常の書籍を求める。
リアル書店やAmazonでついつい本を買ってしまうのは「あ、こんな本あったんだ」「存在知らんかったけど、こんな本欲しかったんよ」という動機が(少なくとも僕の場合は)多くて、今のサイト構成では、その機会をごっそり失っている感じ。もったいない。
一気に使いやすくしてリニューアルオープン!なんて打ち出すと熱い。気がする。
倍速版が別売り
lifehacking.jpの堀さんも指摘していたことだけど、これは別売りにする意味があまりない気がする。ちょっと「mp3 倍速」でググれば
速聴 みたいな倍速聴きが出来るフリーソフト集!無料ソフトで倍速再生、再生速度変更
こんなのもでてくるし。
力を入れているポイントがちょっとズレていないか?
少なくとも僕の意見を言えば、今の方向で日本語オーディオブックがどんどん充実していってもあまり嬉しくないし、今後もずっと興味が無く疎遠なままだろうと思う。主な理由は、母国語において、情報...とりわけ知識を増やす/理解を深めるためのそれに関しては、音声でinputしても文字でinputしてもさほど違いがない、という風に考えているからだ。
これは、日本人が英語のオーディオブックを聴く時の姿勢とは異なる。
言語化しない"なんとなく"レベルであれ、僕のように感じている人が市場の一角を占めているとするならばオーディオブックという文化は、下手すると遠からぬ未来、低迷して破綻しかねない。変化の早い現代のこと。Kindleや電子ペーパーが現実の物となった今だから、何があるかわからない。
感じ方は人それぞれだし僕は専門家(何の?)でもないのだが、僕がどこに問題を感じているかと言えば
「力を入れているポイントがちょっとズレていないか?」
という事だ。
たとえば、主力商品のベストセラー・自己啓発書・ビジネス書の類。これらは本屋へ行ってぱらぱら読めばいいし、それで手元に置いて起きたい本と判断したならば、買えばいい。頭出しの出来ないトロトロした音声ファイルよりも、素早くカンマ1秒単位で1ページ1ページ検索できる書籍の方が何百倍も効率的であるのは明らかだ。
著者本人が読んだ、という触れ込みがたまにあるけど、どうでもいい。果てしなくどうでもいいのに、出演/契約コストだけ嵩みそうなこだわりである。読み方の微妙な差異、重要度や込められた情緒の判断なんてリスナーの脳で勝手にやるからさ。「YouTubeは画質が悪いので流行らないだろう」という、何年か前に尤もらしく叫ばれていた主張を思い出す。ポイントを外している、と僕は考える。
また、情報収集の効率性とは別軸でもう一点語ることもできる。
FeBeを運営するオトバンクは、元々視力に問題を抱える人のために本を朗読するNPO法人が母体になって設立されたと聞く。
果たして、目の見えない彼らにオトバンクが真に提供するべきなのは、昨今のうすっぺらいビジネス書なのだろうか。書籍の洪水の中から取得選択して音声化した厳選コンテンツが、自己啓発書やシリーズ物の英語学習本で良いのだろうか。
「あったらいいな」ではなく「これが必要」と言われる仕事だろうか。
日本だけでも1日に100冊だか1000冊だか出版される本をすべて音声化することは不可能だから、どこかに集中しなければならない。資源の集中投下を行わなければならない。
僕の視点で見ると、そのへんの戦略に哲学を感じない。
極めて偉そうだけど、偉そうにならなければ言えないことだったので、あえて自己棚で書いてみた。もちろん、今は生活に取り入れてはいないものの、日本語のオーディオブックというものに少なからぬ興味と期待があるからこそ*7わざわざ戯言を書くのだ、ということを宣言しておきたい。
この戯言が、ごく僅かでも良い方向に響くことを願って。
*1:話はズレるけど登録にクレジットカード情報が必要なのが結構ハードル高い気がする。身の回りで日常的にクレカ使っている人は案外少ないので
*2:まぁこれは都会の話で、実家あたりだと車で1時間かけて通勤、というのが普通だし、事実僕の父は現在もそうしている
*3:一回使ってみたかった
*4:授業中に睡眠を取って家で受験勉強するというスタイルだったため、一部の先生からは評判が悪かった
*5:前のめりに聞かなくても理解できるなら、それはinputに関して言えば母国語とほとんど同じとみなしていいと思う
*6:ちなみに後者は先ほど『日本史集中講義』の選択理由として挙げたが、次で前者の具体例を挙げる
*7:こうした予防線を張りたくなるあたり、僕も歳をとったなという感じですかね。ちがいますね。