クリエイティブであるとはどのようなことか
"クリエイティブ"とは、どのようなことを言うのだろう。
- 世の中にないものを生み出せばクリエイティブだろうか?
- 難解な問題を華麗に解決すればクリエイティブだろうか?
- イノベーションを起こすものがクリエイティブだろうか?
- 新しいことを閃く人がクリエイティブなのだろうか?
- 閃きを現実に落とし込める人がクリエイティブなのだろうか?
...などと考えているのは、最近内定先で「毎週1つ以上の新サービスのアイデアを6月末まで出し続ける」という課題が進行中であるからです。
基本的に妄想は好きなのでこの課題を楽しんでいるのですが、モレスキンにアイディアをいろいろとメモするうち、むくむくと起こってきた"クリエイティブ"という言葉に対する根本的な疑問に、シアワセうさぎのように悩む毎日。
クリエイティビティの体系化
個人的に、"クリエイティブ"と称される人間の能力は、才能やセンスではなく、技術として体系化出来るものだと考えている。凡人としてはそう思わないとやってらんない。要素は3つ。
1. 前提条件を自ら壊せること
2. 既存のものを組み合わせられること
3. 発想法を勉強して実際に使ってみること
以下、特に"企画提出"の場面を想定して簡単に説明を加えていき、最後に発想法の余談的なものを。相変わらず偉そうだけど気にしない。
1. 前提条件を自ら壊せること
頭の柔軟性、と言い換えてもいいかもしれない。
人間は思考リソースの節約のためか、無意識のうちにいろいろな前提条件に基づいて物事を考えている。自由なテーマでレポートを書けと言われてもなんとなく授業のテーマに会わせてしまったり、研究や仕事で前任者の手法をそのままなぞってみたり。
しかしクリエイティブでありたいと思うならば、まず前提条件、つまり「自分はいまどんなルールに基づいて考えようとしているのか」を認識して、それを自覚的に外してみることが有効になる。
一度制約を外して外側から眺めてみることで、本当に戦うべきフィールドが見えてくるし、実は無意味な所にこだわっていたことに気付くかも知れない。
ちなみに、いっぺん企画提案で明示的にコレをやってみたが正直イマイチだった。だめじゃん。ダメだった理由の一つとしては、企画のコンセプト自体を"hogehoge制約を外したもの"と据えてしまった点かと。「前提条件を自ら壊す」は、思考法の段階で意識すべき点であり、最終目的に据えてはならないようだ。と学習した。
2. 既存のものを組み合わせられること
天が下に新しきものなし、という言葉が好き。
世界は広いので、「これは新しい」と思っても、だいたいは既に考えられている。また、未来は実現される前に「既に起こった未来」として兆候が見えている。少なくとも今僕には「それまで存在しなかった新しい概念」という実例が思いつかない*1。
全ての情報を捉えきれる人はいないので、人間はパクりあい、情報は公開して流通させるべきだと思う。一人一人が一本のアンテナになって、独自のアンテナで捉えた情報を即座に共有する。少なくとも目的を同じとするチームでは、そうあるべきだ。
そうして「ある」ところから「ない」ところへとアービトラージ(サヤ取り)をしてやる。
例えば、アメリカで流行ったものは5〜10年後に日本でも流行する(少なくともネットが普及する前まではそうだった)。この単純極まりない原則を個人単位で実行して成果を挙げたのが神田昌典さんではないかと思う。
これは、id:fromdusktildawnさんが
読まれる記事を書くために、文章技術よりもはるかに有効なこと - 分裂勘違い君劇場
ここで"記事作成術"として挙げられていることを、大きな単位で実行することに等しい。ブログでも仕事でも研究でも人間関係でも、「価値」と呼ばれる概念を生む法則には、さほど違いがない気さえする。
ここで威力を発揮するのは、物事の間に関連性を発見する能力。アナロジー。現実に即した妄想力。「関連性」には「結びつきがない」という関連の形も含まれており、fromdusktildawnさんが、経営者会議で出た話を元にホッテントリを量産できたのも、当時のはてな村には「情報がないけど」「ニーズはある」という構造を見ぬくことが出来たからだろう。
そして、データから将来を推測することの出来る人が重宝される。大前研一とかドラッカーとかアルビン・トフラーとか読むと同じ人間とは思えないほど鋭く事実を捉え、正確に将来を予測している。そしてそれが当たる。神か。
また、「既存のものを組み合わせ」る上で重要視すべきは、完全な新規性を求めず、全体像/文脈を眺めてみることだと思う。
「既にこんな例があるから、その案は新しくないよ」というツッコミは御法度。これは僕もよくやってしまうので気をつけたいと思っている。自分が知っていることを知らせたくて、つい偉そうに指摘してしまう。
ツッコミを入れるのではなく、類似例を引き合いに出して「こうすればあなたの案はよくなる」と進化させたり、逆の概念をぶつけて止揚させたり。
今議論している文脈中に当てはめたとき、どんな意味を持ってくるのか。新しい良さが見えてこないか。木を見て「似てる!」と言うのではなく、森を見て考えてみる。
3. 発想法を勉強して実際に使ってみること
偉そうなことを言える立場ではないんだけど、僕がアイディアを出すとき参考にしている (頭の隅に概念をストックしている) 本が2冊あり、これらは非常にオススメなので紹介したい。手帳を見るとそれぞれ2007年の2月26日と3月2日に読んだらしい*2。
- 作者: ジェームス W.ヤング,竹内均,今井茂雄
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 1988/04/08
- メディア: 単行本
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アイデアの作り方、原題"A Technique for Producing Ideas". 非常に薄い本なので読みやすいけど、発想法のエッセンスが詰まっている。その方法を簡単に表すと以下の4ステップ。非常にシンプルな古典的名著だと思う。
1. 情報を収集し、咀嚼
2. 放置する(無意識に任せる)
3. ひらめきを捕まえる。
4. 具体化、実現性の検討
2冊目。『発想する会社』、原題は"The Art of Innovation"。
発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
- 作者: トム・ケリー,Tom Kelley,ジョナサン・リットマン,Jonathan Littman,鈴木主税,秀岡尚子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2002/07/25
- メディア: 単行本
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IDEOという、シリコンバレーにある*3デザイン・ファームで実践されている"体系的なイノベーション"がテーマ。チームとしてクリエイティブな成果を出すためのノウハウが納められている。
ブレインストーミングの方法やプロトタイプ(β版)の重要性、イノベーションを起こす環境などわりと具体的な話が載っているのが面白い。
クリエイティブ・チームの体系化関連といえば、最近発見して面白かったのが、チームラボのプロジェクト進行方法。
たとえばチームのデザイナーが5人だとすると、5人のデザイナーがそれぞれ同じテーマで別のイメージを作ります。
それを見て、PMが「こっちの方向性」とどれかひとつを選ぶと、5人のデザイナーはそのひとつをベースにまたそれぞれ別のバリエーションを作ります。でてきたものに対して「これでOK」と思うまで、繰り返しこのプロセスを行うのです。
これって完全にGA(遺伝的アルゴリズム)の手法ですよね。
港区赤坂四畳半社長:So-netブログ
GAの手法を使って、フラットなチームで"いいもの"をどんどん積み重ねていく。これで面白いものが実際に出来てしまうというのが凄いなぁ。研究が一区切り付いたら、就活を離れてチームラボに見学行ってみたい*4。
いじょ。
クリエイティブという言葉の定義と切り口でいくらでも語りうるテーマではありますが、僕はこう切ってみました。切断力。