ミームの死骸を待ちながら

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators. We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators. - Richard Dawkins "Selfish Gene"

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators.
We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators.
- Richard Dawkins "Selfish Gene"

流れよ我がキャリア、と博士は言った。第四回Ph.D交流会レポート


告知してたけど、第四回Ph.D交流会に参加してきた。

博士学生・ポスドクが中心となり自主的に企画・運営された交流会を通して、『キャリア形成の意識を高める』、『視野を広げる』などといった自己啓発につなげることを目的としております

Ph.D.交流会〜博士課程大学院生・ポスドクが主体の集い〜:Ph.D.交流会の運営方針


どんな感じか想像してなかったけど、教室でまったりだべったり、近い距離で講師のお話を聞いたり。会自体が何らかの主義を持つことを否定した交流の場であって、毎回幹事が入れ替わることでメンツや雰囲気もがらっと変わるようだ。第一回にはdankogai氏が講演に来たという。

404 Blog Not Found:中卒の私がなぜかPh.D交流会に呼ばれたので行ってきた



保田さんに会った


さて、第四回の講師は"ワクワク経済研究所"の保田隆明さん。我が家にテレビはないので補足してなかったけど(すみません)、最近はメディアによく取り上げられている、経済やわらか解説のプロだ。

僕も図解 株式市場とM&A (翔泳社・図解シリーズ)とか投資銀行青春白書でお世話になりました。特に図解 株式市場とM&A (翔泳社・図解シリーズ)はすごいわかりやすくて、残念な頭の持ち主である僕でも納得できました。


さて今回のテーマは博士のキャリア戦略。ということで保田さんのキャリア観を聞かせていただいた。
保田さんは金融にITに独立起業、大学院と実に密度の濃い人生を送っている。

1998年〜2000年: リーマン・ブラザーズ証券会社東京支店 投資銀行本部
2001年: リーマン・ブラザーズ証券会社ニューヨーク本社 投資銀行本部 M&Aグループ
2002年〜2004年: UBS証券会社東京支店 投資銀行本部
2004年: Life On株式会社 代表取締役SNSサイト「トモモト」を設立し、起業)
2005年: ネットエイジキャピタル(現:ngi capital) 執行役員
2006年〜現在: ワクワク経済研究所 代表


[保田隆明]オフィシャルサイト プロフィール


そして2008年の春からは、本業の傍ら、早稲田大学の大学院でファイナンスを研究。すごい。将来的には利害関係のないアカデミックの立場から、ビジネスを理論からナビゲートする役割を果たしたい、と語られていた。


Monitor GroupはHBSの教授陣が経営に関わって、アカデミックとビジネスをうまく融合させてバリューを出している、という話を聞いたことがある。確かに今の日本にそんな空気は感じられず、ある意味フロンティアであるのかもしれない。なるほどなぁ


ポスドク問題


保田さんのお話の中で、ダイレクトにポスドク問題、高学歴ワーキングプア問題に対する提言は、僕の認識では、以下のようなものがあった。

  • ポスドク問題」「高学歴ワーキングプア」は、話題にすればするほど「そうか、日本のドクターはダメなのか」という印象を与えてしまう。
    • 他人からの評価というものをもっと大事にして、イメージアップさせる言葉やポスドクたちが出していくべきではないか
  • 修士号、博士号そのものがダイレクトに評価につながらないのは、今の日本では仕方がない。
    • しかし、現場で実績を出して行けば「さすが」ということでちゃんと評価される。
  • 企業側の「アカデミック不要論」は、経営層に文系学部卒が多いことも一因
    • アカデミックで培ったものを生かして成果を出してやれば、納得するだろう


「実績・成果を出す」くだりについて思うところあったのでちょっと質問するなどした。面白い話を聞かせてもらった時は、いの一番に質問するのが僕のジャスティス*1


僕が思うに、大学院で学ぶスキルとマインドセットは、企業で評価されるそれとは大きく異なる*2。深く多面的に考え、論理的に仮説を立て、立証するというプロセスは、仕事の現場においては「遅すぎる」。したがって、「最初の扱いが一緒でも実績を出せばいい」と簡単にいえないのではないか、むしろ深化思考が染み付いた脳味噌は、社会に適合し難くなっているのではないか。僕はそういった意図のことを言ったと思う*3


保田さんの答えとしては*4、おそらく博士課程で学んだというそれ自体は評価されない。その代わり、仕事の実務を大学院で学んだ知識で補完したり、逆に、院で学んだことを応用して良質の意思決定をすることもできる。そのつながりはもちろん自分で見つけるしかない。

また、論文を書くことは、ブレイクスルーだ。未解決の問題を見つけ、それを解き、論文を書く。このプロセスは、細分化されて問題が与えられることの多いビジネスの現場ではなかなか身につかない能力。これは博士の大きな強みだろう。



この話を聞きながら僕は思い出していた。Steve Jobsの名講演に出てきた"Connecting dots"だ。


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将来を見越してキャリア・経験を積むことはできない。しかしきっと後から振り返れば「そういうことだったのか」と気付くことがある。保田さんにとって、意義がわからなかった高校数学が、経済学を理解する基盤となったように。
計算よりも、飛び込んだほうがいいのかも知れん。


保田さんのキャリアメイク本


何冊か配布されたので、ちゃっかりもらってきました*5


デキる人は皆やっている 一流のキャリアメイク術 (アスカビジネス)

デキる人は皆やっている 一流のキャリアメイク術 (アスカビジネス)


早速、帰りの電車で速読。おもしろい!キャリアのディテールと意思決定、迷いと提言、抽象化された原則。意思決定を過剰に正当化することなく、ある程度悩んだらスパーンと割り切っているのが潔い。
この考え自体、発展途上の保田さんの"仮説"なのだろう。保田さん自身も「一年前に書いたけど、いま読むと『そうかこんなこと考えてたのか』と思う」と言っていたし、まだ若い保田さんだからこそ書ける、記憶が脳に刻まれて間もない経験が、お年を召した方の説教本にはない、圧倒的なリアリティで迫ってくる。


これは、ちょうど僕のような就活学年にいいんじゃないかな。精読したらまた自分に照らし合わせてエントリ書くかもしれない。


しかし


ウェブ時代と併走するスタンドアローン・コンプレックス。博士ネットワーク・ミーティング@京都に参加して - ミームの死骸を待ちながら
2008-11-26 - 赤の女王とお茶を

博士ネットワーク・ミーティングと一緒になってなにかできないかな、この交流会。どうでしょうid:sivadさん(呼んでみる)

*1:昔、質問について書いたなと思ったらもう一年近く前か。[http://d.hatena.ne.jp/Hash/20080128/1201530951:title]

*2:もちろんMBAなどは別にして

*3:脳内補完済

*4:別に討論じゃないから答えとか質問とか呼ぶのもアレだが

*5:サインほしかった