個人投資家が株式市場で機関投資家に勝てない四つの理由
結論を先に言えば、同じ土俵で勝負せざるを得ない個別株式投資はやめて広い市場に投資しようという。わりと「あたりまえ」な考えをなぞるんだけど、わざわざ書こうと思ったきっかけは、前回コメ欄で
もしよろしければ、もう少し機関投資家のパワーであったり、アクティブに取引する個人投資家が市場で勝てない理由といったあたりに関して、感じられたことを教えてもらえませんか?
http://d.hatena.ne.jp/Hash/20080913/1221304302#c1221408879
なんか、一番気になった部分なので
とのリクエストをいただいたこと。僕はインターンで見たことを元に
機関投資家のパワーを数値として目の当たりにし、「アクティブに取引する個人投資家が市場で勝てない理由」を脳髄から理解した。
http://d.hatena.ne.jp/Hash/20080913/1221304302
と書いたのだが、これは勝間和代さんの
株式の市場では、個人が銘柄を自ら選んで投資をしようとすると、プロが特をして個人が損をする仕組みになっているということを、私はプロの立場から痛感してきました。 (p.74)
お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践
という記述と、(レベルは段違いだけど)方向が同じだ。
てなわけで、金融業界に暗雲な昨今を横目に見つつ、気負わずだらだらと自分の考えをまとめ。勝間さんがお金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)のp.77でシンプルな比較表にまとめられているので僕が客観的にまとめてもしょうがない。本を読み、5年弱投資を行ってきた投資が趣味な大学院生の思い込み+インターンのわずかばかりの経験。いまさらですがタイトルがはてな色に染まっているのは仕様です。
脇道。おもむろに証券と銀行の違い、ざっくり。
/ | 投資の意思決定 | 元本保証 | 名称 |
---|---|---|---|
証券 | 顧客 | なし | 直接金融 |
銀行 | 銀行 | あり | 間接金融 |
以下、機関投資家と個人投資家の違い
機関投資家(linstitutional investors)と個人投資家は、
- 体力が違う
- 速さが違う
- 金額が違う
- 情報が違う
1.体力が違う
ダメージを気にせずリスクを取れる。取れるリスクの量が多い。ただレバレッジかけてリスクを取りすぎたリーマンがアレになったりしたので、体力も無限とはいえない。たまに公的資金注入というバグ技でリレイズがかかる。
2.速さが違う
ロイターとかから、取引アプリケーションに直接ニュースフィードが飛び込んでくる。個別株式に関連するニュースはワンボタンでポップアップされ、即座に取引に移ることができる。
速度の優位が利益の源泉となるため自社制作のアプリケーションは速度を極限まで追求しており、0.01秒単位で他の証券会社と勝負している。最近はネット証券提供のトレーディングアプリケーションが充実してきたとは言え*2、個人投資家は足元にも及ばない。
3.金額が違う
動かす金額が違う。ヘッジファンドは何億円、何百億円単位で注文を出す。その金額はダイレクトに市場に与え*3、個人投資家は波間でもまれるクラゲに等しい。 実際に取引画面を見せてもらったけど、笑えるくらい桁がでかい。。
しかし、機関投資家の額の大きさは逆に投資対象に制限を与えることになり、個人投資家の取引金額の小ささは逆に「小回りが聞く」というメリットとなりうる。中小株でも市場に影響を与えることなく波をうまく乗りこなせばそこそこ稼ぐことが可能。
4.情報が違う
上(2.)で記したように情報の速さも段違いだが、そもそも与えられる情報からして、別種のものだったりする。例えば「板」。
実は証券会社に送られる気配値の情報は、個人が参照できるMax量の倍。これは東証が定めている決まりのひとつ。証券会社とコンタクトを取って取引を行う機関投資家は、文字通り"視野"が倍広いのである。
いじょ。
具体的に個人がいかに損をしているかを見るには、「信用評価損益率 個人」とかggrばいいんじゃなかろうか。
細かいことを言えば、「勝てない」のは同じ土俵であって、異なる戦略を適用すれば利益を上げることは可能である。たとえば、機関投資家が見向きもしない中小株の資産価値をせっせと計算してバリュー投資を行うなど。この方法で個人で莫大な資産を築いた投資家としては、遠藤四郎氏が有名。
株でゼロから30億円稼いだ私の投資法―大株主への道こそ株式投資の本道
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誰も見向きをしないが、その会社の内容は極めて安全で、まかり間違っても倒産の恐れはない、また、その会社の経営状況の変化率から言って、必ず将来人気化するであろう銘柄を狙ったことである。
ところで、株式市場で2、3度儲けるのは、誰にでも出来ることである。しかし20年、30年と損したり儲けたりしながら生き延びるためには、自分なりの投資哲学を持たなければならない。それば分相応、自然体、そして背伸びをしないということである。
遠藤氏は実際に、500万円を元手に30年で資産を30億円に増やした*5。他にはパイオニア株一本でサヤを抜きまくって稼ぎつづけた伝説の相場師など、いろいろおもしろい話はあるんだけど、自分が伝説になれるかどうか冷静に現実的に考える必要がある。
以上いろいろと挙げてきたが、なによりも問題なのは、
個人投資家の大半は個人投資家以外の属性を持っていることだ。
個人で機関投資家のスピード、情報量に打ち勝つためには、情報収集にかなりの時間を投資する必要があり、タイミングを逃さないように端末に張り付いて、ほとんど専業のようなのめり込み様でない限りコンスタントに利益を挙げつづけるのは不可能に近い*6。「株式投資(Fxでもいいけど) ブログ」とかggって、どうやら勝っていそうな人の日常を追ってみるといい。好きな人はいいだろうが、僕は投資一色の生活など御免被る。
つまり個人投資家は、余剰資金でトレードを行う主婦であったり、経済の勉強がてら中期投資*7を行うサラリーマンであったり、僕のように学生であったりするので、彼らのような「片手間個人投資家」はまともに勝負しない方が懸命である、という結論だ。
僕の考えとしては、
今現在、僕がもっとも効率が良いと考えているのは
お金は銀行に預けるな!と組み合わせて読むべき橘玲シリーズ - ミームの死骸を待ちながらでも紹介した方針。
これがもっとも現実的な資産運用法じゃなかろうか。...と終わって、具体的な試行錯誤へ続くわけですね。