人間の能力を説明するパラメータ。集中しろという結論で。
「人間の能力」をここでは、知識労働者としての専門知識/スキルの習得速度、あるいは到達レベルと定義する。このとき、人間の能力と以下のパラメータは相関関係があると感じている。すなわち、
- 投資時間
- 適正
- 興味と必要性
の3つであり、この順に全体パフォーマンスに与える影響が大きい。少し細かく定義を説明すると、
- 投資時間
- どれだけ対象に時間をかけたか
- 適正
- 天与の才、理由は不明だけどかかわっていると楽しい、という嗜好性*1
- 興味と必要性
- これこれこういったことが知りたい、という具体的な欲求、また、業務に必要になったなどの差し迫った個人的な必要性*2。興味と必要性という一見異質なものをまとめたのは、主成分が投資時間、二次主成分が適正であり、それ以外の多種多様なパラメータのうち明記するほど影響力のあるものが「興味と必要性」だと思っているから。
もちろんこの3パラメータは相互に関係しており、独立ではない。
この順から次のようなことがいえる。
- どれだけ時間を投資したか、という一点がいちばんアウトプットの質*3に影響を与える。
- そこそこ才能があっても、時間投資が少ないとパフォーマンスは下がる。
- 興味があっても、時間投資が(ry
要するにひとつのことに集中して時間をかけろ、という使い古されたアレ。
老教官最後の授業
僕がこのことを強く意識させられたのは、とある講義を聞いてのことだ。その講義は今年引退することになる老教官の最後の講義であり、特別講義に近い形をとって100人ほどの学生の前で行われた。
好々爺といった空気を持つその教授は、物理学の領域から生物に入った人で、かつては鬼教官と呼ばれ、僕の所属する専攻をつくった先生でもある。Natureにいくつか論文を出していて、思い出話を織り込みながら、のんびりした言葉で、誇らしげに話していた。また、太陽エネルギーの重要性についても熱く語ってくれた。
ガソリンの値上がり、石油を奪い合って戦争。なんとちっちゃいことでモメてるんだろう、と思いますね。太陽というすばらしいエネルギー源があるのですから、その力を最大限に利用する科学技術を発達させたほうがずっと良い。
彼はインターネットをいままでほとんど使ったことがなく、最近駅ねっとを使い始めたくらいらしい。そして「最後の講義」の資料を準備するにあたり、はじめてGoogleを使ってみたという。「太陽」についての記述をWikipediaで発見して、講義資料に載せ、最近はこんなのまであるんですね、と興奮気味に語る姿が印象的だった*4。
前置きが長くなったが、今この老教官の講義の話を出してきたのは次の一説が僕の心に残ったからだ*5。
若い君たちにアドバイスしたいことがあります。人生は短い。物事に集中して取り組むべきです。私みたいにいろいろやってたら、全部中途半端なまま引退することになりますよ。
老教官は未来の僕かもしれない。興味が拡散し、なんでも出来る気になってあらゆることに手を出して、周囲に迷惑をかけた挙句、すべて中途半端に終わる、僕に似ている。老教官は、少し目を潤ませながら話しているように、僕には見えた。
優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気である。優先順位の決定については、いくつかの重要な原則がある。しかしそれらの原則はすべて、分析ではなく勇気にかかわることである。すなわち、
プロフェッショナルの条件 / P.F.Drucker
- 第一に、過去ではなく未来を選ぶことである。
- 第二に、問題ではなく機会に焦点を当てることである。
- 第三に、横並びではなく自らの方向性を持つことである。
- 第四に、無難で容易なものではなく、変革をもたらすものに照準をあわせることである。
...集中か。