ミームの死骸を待ちながら

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators. We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators. - Richard Dawkins "Selfish Gene"

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators.
We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators.
- Richard Dawkins "Selfish Gene"

Re:Re:プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ


プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - ミームの死骸を待ちながら


思ったより大量の反応が来てびっくり。170ブクマって……うひー。初のホッテントリ入りで、一時はid:fromdusktildawnさんと並んではてなトップに載り、しかもブクマまでいただき光栄の極みです(ふろむださんのファンなので)。
他に、同じくファンであるid:blackshadow氏やid:umedamochio氏のブクマが付いていました。ニヨニヨしてしまう。

はてなで注目されると言うことは情報系の人々の目に触れると言うことで、優秀なプログラマがバイオに参入してこないかなぁとご都合主義思考が頭をよぎった。
貴重な意見として受け止めて返します。ブコメは敬称略させていただきますm(_ _)m


共感・提案派

  • いつも以上におもしろい。IT側の視点からたしかにそうだなぁと思わせる。いいシミュレータがあればいいって物でもないだろうなぁ。これからはバイオの時代!と言われてたのに就職先がなくて困ってる話を思い出した。(toshikaz55)
  • 「誰もが平等に、好奇心の赴くままに、生命をハックできること。」 応援したい(iww)
  • そう、ほんとバイオって手間がかかりすぎ!(nui81)
  • キリスト教に毒された倫理なるものにやられないでがんばれ!といってもスポンサーの意向には逆らえないよなぁ。バイオハザードとケガレの感覚の分離はまだ無理そうだ。(n9d)
はてなブックマーク - プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT


生命倫理キリスト教に毒されたもの、という考え。危険だけど共感できる。


前々から思ってたんですが、バイオ業界がクローズドな原因は、研究者の評価基準が論文に依っているからじゃないかなーって思うんです。
バイオ系の研究者なら誰もが良い論文(NatureとかScienceとか)を出したいと思うし、
研究費や生活(食い扶持)が良い論文とその数にかかっていることを考えると、競争原理からか、やはりクローズドにならざるを得ないと思うんです。
(kelokelo氏)

http://d.hatena.ne.jp/Hash/20080411/1207926831#c


生命系の先輩を何人か補足することが出来た。
シミュレーション系で生命ハック (ライフハック) を実現する、というのが倫理面で現実的なところかな。といってもまだ細胞一個の中にある生体分子の働き・ネットワークすらとらえられていないし、あらゆるパラメータがファジーである生物系をどうコンピュータに落とすか、という問題も難しい。僕は卒研で生体分子の分子動力学シミュレーションをやったのだが、扱う系は短いペプチド、シミュレーション時間はわずか数ナノセカンド…というように、生命のシミュレーションにはほど遠い。

まぁ、MDシミュレーションは原子レベルなので少し方向性が違うか。


そもそもそこまでシミュレータが発達した世界なら、電脳コイルみたいな「シミュレーション上」の世界が重視されるようになってそう。VRとかARとか、数ヶ月前にホッテントリ入りしたmasayashi.com を見ると、こちらの領域も期待が持てそうだと感じる。


人類が脳を拡張する道に進むか、禁忌である生命直接操作の道に進むのか、とても興味を持ってる。両方かも。


生命倫理考えろボケ派

  • これから合成生物学が進歩するであろう状況で、誰もが生命をハックできるようになるとテロに使われる危険性も出てくるわけで、その辺も考えないといけないかなあと思います。(wacking)
  • そんなのただの悪夢だ。勘弁してくれ(lakehill)
  • 良識派が卒倒しそうな発言。私は面白いと思うけどね。(k-takahashi)
  • 遺伝子コードは我々自身抱えてる訳で、 いじる時は慎重に。/バイオだって研究速度はメンデル時代より遥かに加速してる。教育学とか見ろ。人間の子ども、個人の趣味でハックできるか?(filinion)
  • バイオ開発の場合、組み換えモデルが部外に流出してしまった際の回収コストは、場合によっちゃ無限大(=回収不可能)になるんだけど。そこらへんの危機感は、持っていただきたい。(gludeen)

はてなブックマーク - プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT


訂正しておくと、僕は別に「生命倫理など知ったことか」と言っているわけじゃないです。
箇条書きに含まれているように、意識してはいます。

扱う対象が生命であるため、おもしろがってハックすると倫理的にいろいろ言われる

プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - ミームの死骸を待ちながら


誤解を恐れず言えば、僕はMad Scientistになりたい。
Madと言っても、生命倫理を犯さない、全く違う視点からの解決を探したいと思ってる。目的への固執度においてMad。


山中教授のiPS細胞は、生命倫理問題をうまく回避したという点において僕のやりたいことに近い。

受精卵を破壊しなければ得られないES細胞は倫理的に批判されていた。そこで山中教授は成体の細胞から分化能を持つ細胞を作り出す手法を確立し、倫理的問題*1を解決した。控えめに言っても、再生医学に新しい視点を提供することができた。


バイオテクノロジーが生命倫理を脅かすであろうことは、僕がブログ書こうが書くまいが揺るがない事実です。人間が後のことを考えて科学発展を自重することは今まで無かったし、これからも規制は難しい。だったら、問題を認識して先手を打つ手段を探した方がいいと思う。


「あんた原爆作るわよ」


勝手に人の心理をズバリ言ってくれる細木数子を発見した。

こういう人がノリで原爆作っちゃうんだろうな。エントリ主はプログラマに羨望のまなざしを向けているようで実は思いっきり侮蔑の視線で見、なおかつ自分が携わっている分野に誇りを持っている。(Wafer)

はてなブックマーク - プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT


わりと当たってる気がする。ただ侮蔑の視線だけは完全な間違いで、もしも前エントリからバカにしているニュアンスを感じ取った人が他にいるなら、プログラミングスキルのない僕のヒガミですごめんなさい。


IT畑から物申す

まずid:Kiyoyaの突っ込み


プログラマとITがごちゃごちゃになってると思う。
その手の性質がIT固有のものかと言えばそうかもしれないけど、プログラマの特質では決してない。

だいたいITなんてバズワーd

Till you run out of cake. - ハチロク世代


僕は「バイオ研究者見習い生活 with プログラミング」に改名すべきでつか><。

  • そのかわり、デスマはないんじゃないかい?(dbfireball)
はてなブックマーク - プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT


僕が思いつくのは、論文〆切程度でしょうか。はてなで読むような恐ろしいデスマ状態は確かになさそうな感じです。


両方経験した人の意見


貴重だ。普通なかなか聞けんぞ。

  • pyopyoさん

私自身はバイオ業界に身を置くものですが、仕事の都合でIT系の方と一緒に仕事をする事もあり、比較的どちらの事情も承知しているつもりですが、このエントリーは実感として激しく共感しました。。。
インフラや時間的な面からも、とても気楽に趣味な方向には走れません。。。

http://d.hatena.ne.jp/Hash/20080411/1207926831#c

  • 数理シミュレーションから生理学の院に行った自分としてはよく理解できる。“原価ゼロ”のソフトウェア・金融産業の凄さと危うさでもある。ただ、そういった原価ゼロの世界に未来はあるのかといったら悩む。(ochame-cool)
  • 遺伝学専攻からIT系に来た私が思うに「隣の芝生は青い」(mari_777)

はてなブックマーク - プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT


なんとなく共感してもらえるようで、少しほっとしています。


遺伝子からソフトにながれていまはしがない紅茶屋くいっぱです。こんにちは。

  • 物理的にも生物学的にも封じ込めが可能な設備のもとじゃないと研究ができない。
  • バイオはソフトみたいにちょっとテストファーストしようとおもっても時間が掛かりすぎる。
  • 時間も掛かるがお金も掛かる。これをITの時代に喩えるとまだ100畳コンピューターに近い時代だ。
  • んなわけで、いろいろ大変なんだけど、これも10数年もすれば解決するような気がする。
  • これがソフトのようになるにはまずはフレームワークができる必要がある。

紅茶屋くいっぱのあれこれ日記

勝手に箇条書きにまとめた。仰る通りで、僕が作りたいのはバイオロジーのフレームワーク、あるいはインフラです。
こんな面白いのに誤解が蔓延しているのは悔しいし、遺伝子の話を研究室だけじゃなくて仲間うちでプログラムの話題と同じレベルで話したい。
そこでプログラマの状況と比べて羨んでみたわけです。 


「飛び抜けた才能」についての補足説明

  • 飛びぬけた才能を持つプログラマーが誰だかわからんー。(legnum)
  • え、日本に審良先生とか山中先生くらい世界で有名なプログラマーっているの?(yukinanuki)

はてなブックマーク - プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT


僕が意識してたのは、
未踏なひととかRubyのまつもとさんとか、
有名人じゃなくても、小学校・中学校からプログラムで遊んでいたという身近にいる人たち。


コストの話じゃねjk

  • この記事で言ってるのは、要するに、プログラミングをやるには金がかからないってことだよね。バイオに限らず大抵の研究は個人では無理なくらいのお金がかかります。(soulhack)
  • あんた、ITの開発コストとbiologyの実験コストと、わかって言ってる?(extinx0109y)

はてなブックマーク - プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT


id;extinx0109y氏のタグに「国政」が含まれているのがいやいやと思うのだがそれはともかく、

コストの話ではちょっと足りなくて、たとえば子供の頃から数が大好きとか、小学校のころから図書館の本を制覇する読書家とか、星を毎晩見て育つとか、科学クラブで変な薬品を混ぜてみるとか、そういった興味と遊びのダイレクトなつながりが不可能、という意味も込めたつもりでした。

でも、補ってみても、僕の議論がバイオに限らないのは確かか。素粒子物理学とか触れようがないしなぁ
そんな指摘をしてくれた人もいる。↓


他の分野も同じだよ派

  • バイオ研究者に限らずいわゆる「実験」と密接に結びつくものは小さい頃から経験を積むことが難しいと思う。(xr0038)

はてなブックマーク - プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT
  • 多分、生物学だけじゃなくて天文学や物理学なんかにも当てはまると思う。(skylab13)
http://d.hatena.ne.jp/Hash/20080411/1207926831#c

この先どうすればいいんだ


ヒントをもらった。集合知というやつでしょか。

まだまだコンピュータが珍しいものだった時代。MITの学生達が夜な夜な大学の計算機室に忍び込んでたってのは、有名な話。

Till you run out of cake. - ハチロク世代
  • 「誰もが平等に、好奇心の赴くままに、生命をハックできる」ようなシミュレーション系を作ったら良いと思うよ gngr (mrkn)
  • プログラミングは誰でもできる環境があるからその分希少価値が薄い。新しい技術もすぐコモディティ化する。バイオは特権に近いぐらい一部の人しか学べない。その特権をフルに使えば良いと思うよ。(API)
はてなブックマーク - プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT

自分のためのまとめ。


プログラマになりたければ、誰でも、いつでも挑戦することが可能。その自由度とオープンネスはうらやましい。かたや、id:kelokelo氏も言うようにバイオ分野が閉じた雰囲気であるため、より「隣の芝生は青く」見えてしまうのかも。


未だバイオは生まれたばかりで、エンジニアリングの対称としては未熟。だからこそ将来が楽しみだが、このままの方向では特許縛りやジャーナル投稿競争、製薬云々でとてもオープンな雰囲気にはなりそうもない。
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書) 風に言うなら、バイオ人は未だ「けものみち」で生きていけない。それが、バイオ出身者が就職できなかったりする理由である気がする。

けものみち」を生きていくためには、ある程度の基盤が必要なのだろう。


内部にいる人しか壁を壊せないなら、その意味で生物学界にいることはチャンス。同じように感じている人と協力して、バイオのインフラ・フレームワークを構築する手段を模索すればいいのか。


まとめるとバイオヤバイ


さいごに

記事を読んでいただいた方々に感謝します。思考不足な点もありましたが、何らかの新しい情報を受け取ってもらえたなら幸いです。


勝手に自己完結しましたが、引き続き突っ込みがあれば歓迎します*2

*1:少なくとも受精卵破壊、という一点において

*2:僕は打たれ弱いけどネットの批判ならさほど気に病まないらしい