BIRD研究成果発表会に行ってきたPart.2
Part.1「絶対定量オーミックスからの知識発見」は
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に書いています。次は、東大の新領域創成科学研究科、森下教授の発表メモです。
「遺伝子破壊株イメージ・マイニング」
手法
形態の変化、すなわち表現型から遺伝子の異常を見つけ出すプログラムがほしい。出芽酵母を使い、形態を501のパラメータにわけて、細胞の写真を解析(これにかなり計算力必要らしい)。まず画像から酵母を検出するアルゴリズムでちょっと手間取る。
出芽酵母を使ったのは、特定の遺伝子を破壊した菌が既に売られていて、野生型との比較がしやすいため。
絞る
形態の変化を見つけても遺伝子に変化がないと困る。逆に正常を異常と判定しても困る。
菌の外周長、細長さなど生物学的に意味がありそうな501パラメータから、有用なものを選び出す。
遺伝子 | 分析した数 | 正規分布を示す | 有意差パラメタ数 | 1つ以上のパラメタで有意差 |
---|---|---|---|---|
非必須遺伝子 | 4718 | 254 | 247 | 2378(50.4%) |
必須遺伝子 | 219 | 240 | 75 | 168(76.7%) |
有意差ってのはp<0.0001。pをどこまで絞るかは、野生株での該当数がぎりぎりゼロになるとこで。
有用パラメタ
酵母が分裂する時の画像分析して、
- 細胞の大きさ
- 細胞内での核の位置
- アクチン分布
合わせて頻度分析。正規分布を示すパラメタが使える。中心からの座標とか求めて、すごい細かかった。分裂する時のアクチンの動きとかやってた。あと他のオルガネラも染めればまた色々わかるんちゃうかとか言ってた。
マイニング
形態と遺伝子の相関情報を使って、実際に機能予測。DNA損傷の修復機構に着目、形態パラメタが異常に増大・現象する場合をリストアップ。
→修復機構遺伝子と似たパラメタ以上を示したunknown遺伝子、SAC3とDIA2を発見。その遺伝子を破壊して確認したところ、確かに修復機構に関係。マイニング成功。細胞壁合成に関わる遺伝子でも同様にやって、予測成功。
方向性
2004年の中間判定の時点で、
- この手法ならではの成果がほしい
- 多細胞生物に応用できないか
という課題をもらっていた。ヘテロ二倍体の扱いとかが難しく、完全には答えられなかったが、ハエの羽を画像解析、羽の成長の仕方に対し仮説を立ててた。
まとめと将来
5年間で、画像解析ソフトウェア開発し、形態の特徴から遺伝子機能予測(マイニング)に成功。成果をSCMDとして公開。
応用→酵母の生育状態をモニター。発酵に有用な酵母の育成、薬剤表的遺伝子の同定。
感想
表現型からの遺伝子型推測には限界ありそう。でも腕のいい医者は外から見ただけで病気わかるとか言うから、それが自動化される第一歩と言えなくもないかもしれない。
あと二つ。忘れないうちに暇見つけて書く。