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ミームの死骸を待ちながら

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators. We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators. - Richard Dawkins "Selfish Gene"

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M&Aの会計処理とのれんの償却について

Finance


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p.228の「のれん(別名: 営業権)」の処理について。3.5「創立費」の繰延資産つながりで「のれん」の話をしたんだけど、それについて、答えられなかった部分を含めてちょいと補足。個人的には会計と経営の交わる面白い所だと思う。
まず「繰延資産」とは、

問題: 将来にわたって関わる費用を、発生時にP/Lで一括処理すると会社の実際の姿を正しく反映できなくなる。
解決: 発生した費用を「資産」として計上し、それをある年数で徐々に費用処理して消して行く(ビルや土地などの固定資産を思い出してください)

という考え方から産まれたもの。で、「のれん」には二つの見方があって、

会計的視点: 会社の買収価格 - 会社の純資産額
意味的視点: ある純資産と、それに対する価値評価の差を資産として表したもの

となる。
A社がB社を吸収合併したとすると、会計的には、A社のB/SにB社のB/Sが入り込む。このとき、B/S左側の資産と、右側上部の負債、この二つはそのままA社のB/Sに書き込まれる。問題となるのは純資産の部で、買収金額(対価として現金を渡したりA社の株式を発行して渡したりと色々あるんだけど、どちらにしろ対価の「額」を問題とする)と純資産額の大小によって、「のれんなし」「のれん」「負ののれん」の3パターンに分かれる。


買収金額 = 純資産額

まず、シンプルに株の100%をそのままの値段で株主から買ったとする。このとき20万円の出費と20万円の純資産の部は釣り合い、そのままB/Sに足し合わされる。のれんは発生しない。
ちなみにこの20万円というのは「時価総額」のことと考えていい。つまり 株価×株式発行数 で表される額。

買収金額 > 純資産額


誰かが20万円の株式を持っているとする。突如、どこの馬の骨とも知れない会社(?)が「その株を20万で売って下さい」と言って来たとしても、はいそうですかとは言えないことが多いだろうし、会社の創業者一族など、会社に近い立場にいる株主ほど売却を渋るのが想像出来ると思う。
株主が渋ったのか、双方にメリットのある価格を議論した結果だか知らないが、ともかく純資産額よりも多い価格で会社を買ったとき、「のれん」が発生する。

p.228の例で行くと、純資産20万円のところを40万円支払った場合、差額の20万円が「のれん」となる。
のれんは「営業権」として固定資産>無形固定資産の部に記載され、毎期償却されて行く。残存価額はゼロなので、例えば20万円を10年で償却する場合だと毎期2万円ずつ費用処理されていく。ちなみに費用処理する時の項目は「販売費および一般管理費」で、「特別損失」や「営業外費用」に入れる事は出来ない。


のれんは、企業結合会計基準により、20年以内に償却する決まり*1となっている。償却期間は恣意的に決定出来る。僕が勉強した時は商法の規則が優先されて最長5年の償却だったが、2006年に商法の記述が消去され、会社法の20年が適用されるようになったらしい。


のれんの意味

会計処理から離れて「のれんの意味」を考えると、のれんは「形として見えない会社の価値」「超過収益力」と言える。
かといって、たとえば「うちの会社は副社長が2時間睡眠で働けてしかもガンガン取引成立させて来るから、1億円の資産として計上しよう」だとか「取締役に芸能人がいるのでブランド力があるが、これには2億円の価値がある」などと自社で決めて組み込んでしまうと、せっかく画一化した会計の仕組みがカオスになる。なので認められていない。
のれんが発生するのは「有償取得」時のみであり、会社あるいは事業を「まるごと外から評価」して「B/Sに組み込む」機会のみ、となる。これが買収だったり、合併だったり、営業権の譲渡だったりするわけです。


買収金額 < 純資産額


面白いのは、「のれん」は買収金額の額に応じて負の値にもなりうる所だ。要するにB社の資本金は20万円だけど、それを10万円で買ったような時。事業がうまく行ってなかったりすると、純資産額よりも安い値段で会社を買うようなケースが出て来る。
このとき、B/Sには固定負債の部に「営業権」と表記される。これを順々に減らして行くには、毎期のP/Lで営業外収益として計上することになる。純資産20万の会社を10万円で買ったとすると「負ののれん」は10万円で、これを20年以内の年数で均等に償却して行く。これも残存価額はゼロなので、例えば10万円を10年で償却する場合だと毎期1万円ずつ収益として処理されていく。ちなみにP/Lの項目は「営業外収益」に入る。正ののれんは営業活動だけど、負ののれんは営業外に入る点に注意。


こんなところで。いろいろ間違いもありそうだが、見つけたら修正しよう。。。


疑問と自己解決

  • 持分プーリング法/パーチェス法の議論では、時価評価するパーチェス法の時のみのれんが発生する、と書かれる事が多いが、持分プーリング法の時でも、対価の額によって左右のバランスが崩れ、のれんが発生するのでは?
    • その二法が問題になるのは、株式を対価とした合併の場合だ。つまり、会社を現金で購入するのではなく、自社(A社)の株式と交換でB社の株式の100%を入手する場合。対価が多いとか少ないとか関係ない。
    • ちなみに2008年12月をもって、日本でも持分プーリング法は廃止されている!
  • アメリカの会計基準ではのれんを定期償却しない。代わりに年一回の減損判定を行い、減損が認められた時に減損処理。
    • つまり日本「のれんは時間の経過で価値が減って行く」アメリカ「価値は減っていかない」という主義。

*1:かつて楽天はのれんを1年で償却したらしいが、いまの法律ではこれは不可能