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ミームの死骸を待ちながら

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators. We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators. - Richard Dawkins "Selfish Gene"

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We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators.
- Richard Dawkins "Selfish Gene"

"新卒は外資の大企業"と思っていた僕が最終的にベンチャーを選択した理由

就職活動 社会勉強 career


四月に書いた内定記事 で「今後書く」としていた記事のうち一つ、"「新卒は外資の大企業」と思っていた僕が最終的にベンチャーを選択した理由"を今更ながら書いた*1
いや、ちまちま書いてはいたんだけど。時間がかかった理由としては、「尊敬しているが価値観が違う人に不快感を与えることなく、自分の価値観を説明することの難しさ」の壁にぶつかっていたからだ。


客観的に見たベンチャーと大企業の特徴自体は、僕よりも語る資格のある方々が例えば 就職活動をする人に送る、独断と偏見と経験による超大企業と超未上場ベンチャー企業の違い - VENTURE VIEW こんな感じの記事にまとめていることが多いので、僕が今更語ったりはしない。Webをふらふらしたり人に聞いてみればなんとなしにわかってくる。
したがって僕がこの記事で目的とすることは、僕は上記の特徴の中のどれを重視して、その選択はどういった経験/判断に基づいているのか、という例を示すことだ。とは言っても所詮は学生なので見えていないことがほとんどであり、その件に関してはコメント欄で非常にストレートかつもっともな指摘を受けたことがある*2

社会人3年目の僕の目から見ると、あまりにもおこちゃま過ぎて、はずかしくて、、。
今はなんとも感じないでしょうけど、(それどころか、大きな自信もあって、みんなに見てもらいたいんでしょうけど)5年後、10年後にHashさんが成長した暁には、自分自身で恥ずかしくなってこのブログ自体を消しちゃうことになるんじゃないかな、と思わずにはいられない次第です。
見ててあまりにも痛かったんで、余計なおせっかいをしてしまいました。

【就活終了宣言】id:Hashは金融工学ベンチャー「センティリオン」に入社します - ミームの死骸を待ちながら


たぶんこのエントリも(引き続き学生ingなので当然ながら)先輩世代から見ればガキな印象は拭えないのだろう。だがまぁ、そのへんは顕名でブログを書く以上織り込み済みのリスクと割り切って、狭い視野の中、少ない経験からどう自分を分析し、周りの人からどういう影響を受け、どんな思考を辿ってきたのかを書いていきたい。もう道を決めてしまったため、後からのこじつけに思える部分もあるが、自分の中で理由を体系立てるとしたらこのエントリのようになるはずだ。...前置きはこのへんにして。


こんてんつ

  • そもそも「外資の大企業」を目指そうと思った理由
    • 経験不可逆性理論: 「新卒で大企業」という考え
  • 日本における「外資系」の限界
  • 旧時代の「安定志向」はもはや前提にすらならない
  • 本当に「今しかできない」こととは何か?
  • けものみちに突き落とされた

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そもそも「外資の大企業」を目指そうと思った理由


気がついたら自分の中に大前提として居座っていた感のある「外資大企業」。目指そうと思ったきっかけは一口に言えないけど、おそらく過去の経験に起因するところが多い。
僕はごくごく平凡な立ち位置から無謀にも "最上級" を目指して、結果 "中上"〜"上級" 程度の位置に落ち着く、という経験が多かった*3「背伸びしているうちに、本当に背が伸びていることがある」というやつだ。そのため、自然な思考の流れとして "最難関" とされている外資コンサル、外資金融を志望することになった。エンジニアがシリコンバレーに憧れるような感じに近い気もするし、根本的にミーハーでもあるのだろう。

また単純に、早期から採用活動に積極的な企業は外資系が多いという理由もある。僕には、自分に取って重要なことは早期から(やや神経質なくらいに)準備しておくというクセがあるため、一年前の今頃には就活を意識していろいろと動き出していた。この時期、眼につくのは外資ばかりだった。特に僕のような凡人にとっては初期から最強レベルに触れる経験が非常に大事で、夏頃から就活マッチョな学生とディスカッションしたり酒を飲んでいると、就活が本格化した時期には「何、こんなもんでいいの?」という感じで、わりと精神に余裕を持って望むことができる。

他にも、例えば大前研一氏、堀鉱一氏、勝間和代氏、保田隆明氏など僕が(主にその著書を通じて)憧れる先人には外資系企業で経験を積んだ人が多かったり、身の回りの「優秀だなぁ」と思う同期/先輩がこぞって外資を志望していたり、といった周囲の影響も少なくなかった。


経験不可逆性理論: 「新卒で大企業」という考え


僕は半年前まで、新卒では大企業に入ろうと思っていた。その理由は以前ブログに書いたことがある。

僕は、いつかやれることよりも、今しかできないことに価値を置くべきだと思っている。同様に、できることが狭まる選択肢は、他の条件が同じなら、選択しないことが賢明だと思っている。就職先の選択においても同様で、僕がいきなりベンチャーに行かず大企業に行くつもりであるのも、

は、かなり難しい一方、

の転職が比較的容易であると思われるからだ。

理系修士が就活を経験すべきだと思う理由 - ミームの死骸を待ちながら


ここまでが、"新卒は外資の大企業"と考えていた時期の僕の考えだ。タイトルにもある通り、これらの考えから、方針が変更されていくことになる。その背景にはいくつかの経験があり、以下でそれを説明していく。

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日本における「外資系」の限界


単純なのだが、「外資系=英語、国際的、フラット、日本的企業の悪い所がない」という先入観があった。このイメージに基づき、わずか1ヶ月弱の間であるが、昨年の夏に外資金融ITでインターンとして働いた 。このインターンは僕の視野をものすごく広げてくれ、とくに

多様な文化を受け入れる社風だそうで、アメリカ、イギリス、インド、中国、ルーマニアインドネシア、オーストラリアなどいろんなバックグラウンドを持つ人と交流した。もうね、楽しいんよこれ。視野の壁崩壊しまくり。最初はびっくりしたが、だんだん「これが普通であるべき」「日本の枠の中で生きることはもったいない」と思うようになった。

外資金融IT部門でのインターンを終えて - ミームの死骸を待ちながら

この気付きはその後の就職活動の軸となった。


しかし、勤務先として見た時に、毎日の仕事はさほど「世界規模」ではない。インターン期間中、様々な社員さんに仕事内容を聞いて回った(「毎日誰かを食事に誘おうメソッド」である)結果、ニューヨーク/ロンドンの仕事を日本向けにローカライズするという内容が少なくないことがわかった(上記のエントリを書いた時はこれをさほど重要視していなかった)。最近読んだ『「日本の経営」を創る』の一説が僕の考えを代弁してくれるかもしれない。

私は日本の子会社が、アメリカ本社の単なる植民値みたいに運営されていることを、非常につまらないと思った。「俺は社長だ」と言ったって、結局は現地のお頭に過ぎないのかと。多国籍企業といったって、アメリカ本社の会社はあくまでアメリカ人の会社だと。(中略)
現実には本社にお伺いを立てないと動けない組織が圧倒的。つまり、その点じゃアメリカ企業も日本企業もなくて、おたがいさま。だったらわたしの結論は、アメリカ人に日本で現地人として使われるより、日本人として海外で現地人を使う立場の方がいいなと(笑)。
(p.35, 「日本の経営」を創る)

つまり日本における外資系企業とは「本社のビジネスを日本で行うための派遣部隊」のような立ち位置をどうしても抜け出せないのである。もちろん企業にもよるだろうが、このあたりを自覚してからは盲目的に「外資外資!」と憧れるのではなく、一歩引いて見るようになった。


旧時代の「安定志向」はもはや前提にすらならない


いつの時代でもそうだろうが、昔の価値観が通用しなくなっている。親世代の、経験に基づく仕事観の押し付けは必死に回避した方がいい*4。もしあなたが理系で研究室に所属したまま就活しようとするなら、社会に出たことがない先生方の意見には、絶対に耳を貸さない*5ことだ。
具体的に言うと、大企業=安定志向という"前提"の上で「僕は安定した生活がいいのかそれとも...」と考えること自体が危険だ、と僕は考えている。もうその前提は通用しない。大企業=安定/安泰、という図式を「静的安定」と言うならば、現在この図式は当てにならない。そうではなく、今求められる「安定」とは、今後状況がどう変化しても生き残っていくスキルを身につける「動的安定」ではないかと思う。
だから僕は、「景気が悪いから」と"旧時代"の静的安定を求めて大企業に入って安定を得ようとするとゆるやかに死滅しそうだな、、、と思ってる。ぐつぐつ煮え立つ湯の中、まだ冷たいからと豆腐に潜り込むドジョウのようなものだ。それよりも、肺呼吸を習得して鍋から出る方法を模索したほうがマシだ(肺呼吸は無理があるか...)。以下、僕が来年入社するセンティリオン鈴木社長のブログより、内定者に関して言及された箇所を引用してみる(強調引用者)。

世の中が不景気であるから、不安定に見えるベンチャーに入る。
普通の人はこのような時期には大手を志望しますが、彼らは逆張りです。でも、これは非常に理にかなっています。

  • ベンチャーは転回する際もスピードがある。スピードがないと死ぬ。(大手に比べて個人の成長も超早い。)
  • 不景気の時期に生き残れるベンチャーは成長軌道にのったら大化けする。(はず。)
  • 若いので会社がコケたとしてもリカバリが容易。むしろその経験は強みになる。(コケる気ないけど。)
  • 大手は、既に成熟していて後は落ちるだけを知っている。(幕末の幕府?)
センティリオン2009年度始動 (江戸前IT社長のブログ)|金融工学のセンティリオン株式会社


社長も3番目の要素として挙げられているように、僕も「失敗するなら若いうち」だと強く思っていて、たとえ「会社自体がコケる」という最悪の状況に陥っても、なんだかんだ生きていけるような気がしている(楽観)。でも、会社の存亡レベルじゃなくとも、仕事を個人の責任として引き受けつつもそれがダイレクトに会社にも繋がっている以上、「失敗」の規模/責任がどうしても大きくなる。そうした背水の陣によって、緊張感・覚悟が生まれる。若いうちにこの感覚を味わえるのは貴重だろう、と思う。逆に言えば成功の規模も大きく、そこにやりがいを見いだすことができれば、これほど嬉しいことはない。


本当に「今しかできない」こととは何か?


経験と学習によって頭脳は向上していくとしても、体力のピークは20代。ならば働けるうちに、必死こいて働けるだけ働いておくべきではないか?すなわち僕が選択すべき「今しかできないこと」は、「新卒パスポートを使って大企業に入る」ことではなく、「リスクを取れるうちに取っておく」ことである。体力が落ちてきたり、結婚して家族ができたりすると、なかなか仕事一本!とは行かなくなるし、「会社がコケ」た時のリカバリがつらくなるはずだ。


もう一つ。「大企業でしかできない経験」というものは、確かに存在するのだろう。大きな仕事をやろうとすればするほどチームで働くことが重要になってきて、その一員としていかに貢献するか、どうすれば最終的に成果を出すことができるか、という点を学ぶことができるはずだ。社会人の初めにそういった「型」を身につけるのは確かに大切なのかもしれない。僕も最初はこの考えだった。つまり外資大企業で基礎を築いた後、ベンチャーに行こうと思っていた。

しかし、ここで一つ問題がある。「大企業で働くうちに、悪く言えば"洗脳"されてしまい、次に向かって動けなくなるのではないか」という可能性だ。id:ramyanaさんにもtwitterで言及されたのだけど、考慮すべきはその人の影響されやすさ(よく言えば環境適応能力の高さ)だと思う。


僕は前述の外資金融のインターンでも大手シンクタンクのインターン でも、わりと要領よく仕事をこなせることを知った。「要領がいい」という言葉は、実際のところを言ってしまえば、あまり危機感のないインターンだったとも言える。僕はある程度仕組みが出来上がっていると、その仕組みに適応し、必要なものを最小限の努力でアウトプットしようとするクセがある。この体質だと、仕組みの出来上がったシステムの中に放り込まれてしまうと、そこに適応して、それ以上動く気がなくなりそうだ。

むしろ学部3年生のときに参加したECナビの理系インターンの方がよっぽど必死だった。あの時はまったくゼロからのスタートで、会社側も最初のインターンということでお互いに五里霧中、社員さんと手探りでやってる感じがとても楽しかった。やはり僕は無茶振りされたり、ほとんど無理としか思えない高さの目標を定めないと、スイッチが入らないのかもしれない。


けものみちに突き落とされた


「あなたの友人を教えてくれれば、あなたがどのような人間であるかを言い当ててみせよう」とは誰の言葉だったか失念したけれど、他人の影響というものは馬鹿にできない。付き合う人の考え方は、自分自身の考え方を構成する重要な要素となる*6


実を言うと、僕は就職活動期において、幾人かの先輩世代の影響を強く受けた。KGC理事長の柴田さんには何度も相談に乗ってもらったし、元・上場ベンチャー社長、現・MIT学生という面白い経歴を持つYさんとはMITに行った際、個人的にお話しさせてもらった。ボストンにてこの二人に大企業的"洗脳"の怖さを聞かされ、大企業志向がゆらいだのが最初のきっかけかもしれない。バイオインフォマティクスを切り拓いて来た筆頭世代であるDBCLSのぼうのうさんからは「名前に"拓"が入ってるんだし、やりたいことやってみれば?人間いつ死ぬかわからないし」と背中を押してもらった。
ありがとうございます。


また、ベンチャー志向の価値観に対する論理的な裏付けやサポートをしていただいたのが人材紹介ベンチャーであるSLOGANさんで、よくセミナーに通っていた。今回の記事はSLOGANの伊藤社長やOさん(企業選びの個別相談に乗っていただいた上、個人的にも食事しながらお話したりとお世話になった)の論理を、僕なりに経験で肉付けした記事、と言うこともできるかもしれない。
ところでSLOGANついでに一つ情報を出しておくと、「ベンチャー企業に興味あるけど、星の数ほどあるしどうやって選ぼう...」という人はSLOGANの運営するGoodfind 次代を創るビジネスリーダー/アントレプレナーのためのキャリアサイト グッドファインド の扉をたたいてみると良いでしょう。Good Find側で「良いベンチャー」と認められた会社しか紹介しないという方針なので、良質ベンチャーに出会える可能性は高いです。実際、GFを通さず僕が個人的に探して訪問したベンチャーは「うーん?」という会社が多かったので、フィルタリング精度はかなりいい、という感触です。


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いじょ。


いろいろ書いたけど、結局の所まだ働いてないのだから全部予測に過ぎない。わずかばかりの経験から立てた仮説。僕が今回半年前のエントリを引いて反対の意見を述べたように、今日の記事を振り返り、より高い視点から批評できる日を楽しみにしている。


*1:ちなみに、並列して予定していた記事の一つ、釣り針ビリティ満点のタイトルだった"旧時代の「安定志向」で就職すると死亡する"の内容も当記事に含まれていると考えてください。書いているうちにほとんど重なってしまうことに気がついたので...

*2:余談: 件のエントリのコメント欄では、だいぶ貴重な意見をもらった。たぶん5万円くらいの価値がある(てきとう)。ブログおいしいです

*3:判断基準は感覚的なものなので特に細かく定義しない

*4:我が家は幸いにも「あんたがええ思うとこ行きな」というぬるいノリだった

*5:またはより穏便に聞く姿勢だけ見せておく

*6:その意味でも、大企業に入って仕事をしながら、ベンチャー意欲を燃やし続けるのは非常に難しいと思う