ミームの死骸を待ちながら

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators. We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators. - Richard Dawkins "Selfish Gene"

We are built as gene machines and cultured as meme machines, but we have the power to turn against our creators.
We, alone on earth, can rebel against the tyranny of the selfish replicators.
- Richard Dawkins "Selfish Gene"

外資金融IT部門でのインターンを終えて


8月から9月にかけて、とある外資金融のIT部門インターンをしていた。この時期から*1採用活動に熱心なのは外資系が多いこと、大学に入った頃から金融や経済に興味があったこと、あと少なからぬミーハー心が動機となって申し込んだが、いい意味で想定外の経験ができ、内情をある程度見た上で就職先として考えられるようになった。
問題ないであろう範囲で僕の見たことと、感想をつらつらと書いていく。エントリにまとめないと終わった気にならないブログ脳。


インターンの仕組み、制度について


選考。採用は極少人数で異なる部署に配属され、共同作業はなし。僕はデリバティブ部門を希望*2した。他には債券や株式部門など。社員さんが仕事しているフロアに席をもらった。

本採用との関連*3は無いらしい。日程もカリキュラムもフレキシブルで、研究室のゼミと両立できて助かった。


インターン内容について
  • 金融を支えるシステムを見せてもらう
    • 東証から一秒1000件飛んでくる取引データをさばき、他社より速くクライアントに見積もりを返し、リスクを管理する。それぞれに独立したアプリケーションを用いている。
    • どんな仕組みですか?と聞いてみると、当たり前だけどおなじみのテクノロジー。なんか不思議な感じ。
    • 現代の金融は、すべてデータであると考えていいように思う。自動取引、複雑な計算、フラットな世界。
      • その意味で金融の情報部門は案外本質に近いかもしれない。
  • 金融のお勉強
    • 僕はデリバティブ部門だったので、Option, Futures, Greeks (Delta, Gamma, Vega(Tau)), Swap, Volatility, Value at Risk, Arbitrageなどなどを勉強。正直難しい...orz
    • ウェルスマネジメント
      • 一昔前にYUCASEEが話題になったが、富裕層なにそれ食えるのという感じでいまひとつ実感が持てずにいた。ウェルスマネジメント業務について話を聞き、ほんまにおるんやな、と認識。投資はのんびり、でっかく、なんでもあり。おもしろい。商品開発とか、数学できんと無理なんやろけど。
  • システムの開発
    • ちょっとしたシステムの追加機能を実装。設計、テスト、本番環境へのアップロード…と、全体の流れを体験。
  • 業務内容を見せてもらう
    • 社員さんに時間をとってもらい、このシステムはどんな戦略に基づいて、どんな技術を使って、どんな風に仕事に使われているのかを解説してもらう。
    • 規模が半端ない。
      • データ的な意味でも、動く金額的な意味でも。
      • 機関投資家のパワーを数値として目の当たりにし、「アクティブに取引する個人投資家が市場で勝てない理由」を脳髄から理解した。

雰囲気について


会話もメールも社内チャットも全部英語で日本人率も低いため、プチ留学気分が味わえます。

外資金融という先入観からピリピリした仕事場を想像していたが、社風なのかIT部門の特徴か、自由でオープンでのんびりした雰囲気だった。昼休みにサイクリングやジョギングといった軽い運動をしてる人もいたし、大半の人が定時に帰る。それでいて仕事はちゃんとこなす*4し、優秀。なにこれ、めっちゃ好きなんやけど。

社員さんは新しい技術を意識*5する、プログラムを愛する気のいいギークだし、使う技術は馴染みのもので規模がでかいだけで、僕が見てきたIT企業とあまり変わらないなぁと思った。服装もかっちりしてないし。


英語と、グローバルというなにものかについて


部門内で日本人は三割くらい*6。会話は英語。配属部署のdirectorが日本人だったんだけど、英語で会議を仕切ったり冗句を飛ばしあったり、めちゃくちゃかっこよかった。


僕のミニシステム開発を世話してくれた直属の上司が日本語喋れなくて、コミュニケーションはすべて英語で行うしかなくて、僕のへたくそな英語が恥ずかしかったりちょっと雰囲気が怖かったりで、最初は気後れしてた。でも共通の趣味を発見して雑談したり、昼食に誘ってじっくり話してみると気さくな人だとわかった。先入観よくない。


そのうち「英語は勢い」だと悟りを開き*7、いろんな人に「どんな仕事してんですか」と絡んだりした。また、せっかく来てるんだしと学生特権をフルに活用して「毎日誰かを食事に誘おうメソッド」を発動*8、公的/私的なもろもろの事情を聞いてみるなどした。その分システムの開発は...ぼちぼちの出来となった*9


英語環境に放り込まれて英語使うしかない状況で、荒削りながらも英語でコミュニケーションをとるコツをつかんだ気がする。

TOEICとかほとんど英会話に無駄じゃないか?会話に語彙力はさほど必要ないし。相手の発言を聞き取れるようになるくらいで。700程度あれば現場に飛び込んで実践に移るべきじゃないかな、と思った。



多様な文化を受け入れる社風だそうで、アメリカ、イギリス、インド*10、中国、ルーマニアインドネシア、オーストラリアなどいろんなバックグラウンドを持つ人と交流した。もうね、楽しいんよこれ。視野の壁崩壊しまくり。

最初はびっくりしたが、だんだん「これが普通であるべき」「日本の枠の中で生きることはもったいない」と思うようになった。


全体を通じて


インターンのいい面を強調したが、よくない面もあった。IT系という視点で見ると最先端とは言い辛く、社内開発のアプリが乱立していて、そのメンテに携わっていると金融視点を養うどころではなくなってしまう。


金融業界に限らず、インターンで内情をある程度見ておかないと、少なくとも僕の場合はそこで働く自分をイメージすることすらできない。インターンに行く機会が持てずともOB訪問は必須だろう、と思った。良い経験させていただきました。


就職について


興味拡散系故にやりたいことはたくさんあるが、最初の一歩でだいぶ選択肢は狭まる。特に僕は飽きっぽいので気をつけて就職しないと痛い目見る。本格採用のエントリーはまだ始まってすらいない。


もしIT系の仕事をするなら、流動性が高くて新しいことができる環境がいいなと思う。(研究所とか除いて)大企業のシステム系は安定した技術使うし、既に仕組みができてしまっており、制度や文化的な縛りが強いイメージを持っている。

でも完全情報系に飲まれてしまうと生物専攻した意味がない。情報技術も金融も経営も、それを使ってバイオで楽しいことしたいなぁという気持ちが根底にあるように思われる。いや、もっと底に共通項があんのかな。要検討。


仕事というのは結局作業の積み重ねで、ひとつひとつの作業が好きなときのみ、その仕事は幸せなものになりうる。加えてどの会社で働くかというのはとても重要だ。ドラッカーの言葉に

If there is any conflict between your values and strength, always choose values. Find a position that is compatible with your style.

というものがある。半年間の研究没頭実験からドクターに進まないことは決めているんだけど、そもそも働く必要があるのかどうかよく考える必要がある。視点を固めずに行こう。

*1:入試も資格試験もそうだったが、僕には先走りすぎる傾向がある

*2:希望した理由は、独学だとくじけそうな難しい金融工学を強制的に叩き込んでみたかったから

*3:ショートカットできるとか

*4:あたりまえだけど。成果を出さないと容赦なく切られるらしい

*5:僕のRails経験に興味をもってもらったり

*6:たぶん

*7:学生だから傾聴してもらっている、という特権を踏まえたうえで

*8:お財布が厳しい的なアレもあって

*9:最終発表で設計がフレキシブルだと褒められたけど、コード総量は100行くらい

*10:インドの人多かった。インド人といっても地域や民族もいろいろで、把握しきれていない